先日、ある会の方から、「東南アジア貿易事情視察」の話が持ち込まれました。
行き先は、主にカンボジアとラオスだったようですが、一度、タイの空港に入り、そこから現地の空港へ飛ぶような話になっており、私も一瞬、考えたのですが、当方も、経済状況が決して楽観できない水域に入ってきていることもあり、丁重にお断りしました。
ただ、「タイから入る」という点で、少し、思うことがありました。
昨年だったか、タイで、反政府運動家たちによって国際空港が封鎖され、その影響で世界各国の国際線航空機が離発着出来ない事態となってましたよね。
これは、昔、日本で、帰省シーズンに飛行機が落ちたとき、その翌日、キャンセルが相次ぐ中、「二日続けて落ちるわけがない」と言って、ガラガラの客席を満喫しながら帰省した友人がいましたが、今回のタイの空港占拠事件は、これとは大きく違い、「二回続けて占拠される可能性」があると思うんです。
つまり、これまでも、タイなどでは
軍事クーデターなどはよくあったのでしょうが、それらは何だかんだ言ってもあくまで政権闘争の一環で、つまり、首から上がすげ変わるだけのことで、国民生活や観光客には特に影響はなかったわけです。
ところが、今回、空港占拠で政権が倒れたことで、国民は、首相府を占拠しても政権は倒れないが、空港を占拠すれば政権を変えられる・・・ということを知ったわけで、であれば、これからも何かあるたびに、あるいは、国民が政権に不満を持つたびに空港が占拠される・・・ということになるのではないでしょうか。
(もっといえば、政権対立派はことあるごとに空港占拠をあおる傾向が出てくるでしょうし、不況で、急速に治安が悪化しているタイの国内事情を考えれば、外国人を人質にとることの利までも知らしめてしまったのかもしれません。)
この事件では、「タイ国際航空は、欠航や予約のキャンセルなどで約520億円の損害があったとし、反政府団体に損害賠償を請求した」と聞いていますが、この損害賠償はどの程度、実行されるのでしょうか。
この損害賠償は、絶対に、あやふやなまま終わらせてはいけないと思います。
江戸時代の
「直訴」は訴状を差し出した人間の
生命と引き換えという感覚で為されるものだったといいます。
それは当時の感覚ではやむを得ないことで、もし、何のお咎めもなかったら、大して苦しくない人たちまで直訴に押し寄せてくることになり、
封建社会そのもののが崩壊したかもしれません。
その意味では、中国の
鄧小平さんが
天安門事件のときに強権を発動しての収拾を図ったように、タイ政府も、まずは理を尽くして説得し、どうしても、それを拒む場合は強権を発動してでも
「退去しないと交渉には応じない」という姿勢を貫くべきだったでしょう。
今回の空港占拠は、せっかく、ハブ空港の地位を築いたタイにとっても、ひいては、タイ国民にとっても高い代償になったように思えて成りません。
平太独白