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神格視されすぎている島津斉彬の譲歩引き出し戦略
幕末の名君として知られる島津斉彬という人物ですが、彼は愛弟子である西郷隆盛の後年の活躍から、少し、神格視されすぎている傾向があるようにも思います。
一例を挙げると、斉彬は、安政の大獄に対して、局面打開の為に軍事力をもっての形勢逆転を企図しましたが、確かに、あの時点では、遅かれ早かれ、斉彬にも何らかの処分が下されたでしょうから、彼としては、他に手がなかったといえるのかもしれません。
が、それにしても・・・と。

まず、斉彬には勝算があったのか?と。
兵力を率いて東上したとしても、途中の彦根には敵の大将である井伊直弼の井伊家が控えているわけで、直弼という人の性格からして、また、武士というものが本来、戦闘集団であることを建前としていたことを考えても、「はい、どうぞ」ということにはならなかったと思います。
おそらく、直弼は幕府大老として、諸大名に出陣を命じ、かつ、幕府兵力を動員するでしょうから、精強でしられる島津軍も「快進撃」とは行かないでしょう。
となると、島津軍は、まず、京都で朝廷を押さえる挙に出たと思いますが、すぐ傍にいる井伊家がこれをみすみす指をくわえて見過ごすはずもなく、天皇はむしろ井伊家が保護下に置いたでしょう。
その後、直弼は「島津軍に正面切って決戦を挑む」、あるいは、「そのまま薩摩に攻め込む」などというような愚かな策は採るはずもなく、斉彬が出兵した後に、斉彬と不仲の実父で先代の斉興お家安泰と引き換えに斉彬を廃嫡させればいいわけで・・・。
島津軍は精強とはいえ、孤立無援のまま、立ち枯れするように壊滅したでしょうか。

以前、誰だったか、「大塩平八郎の乱の時点で、西国雄藩の一つでも立ち上がっていたら、幕府は倒れたのではないか?」という説を唱えておられましたが、私はこの論には否定的です。
大国とは、ある日突然、衰えるのではなく、徐々に徐々に衰えていくものからです。
その意味では、何だかんだ言っても、大国のその底力は侮りがたい物があるでしょう。
(老いた大英帝国が、新興国ドイツの挑戦を二度にわたって跳ね返したことや、古代ローマ帝国が東西分裂した後も、たびたび、西ゴート族の侵攻を跳ね返したことなどがその顕著な例でしょうか。)

おそらく、斉彬も、本気で武力出兵を考えていたわけではなく、相手から譲歩を引き出すための手段として武力上洛を匂わせていたのだろうと思います。
(だからこそ、鹿児島城下で出兵のための練兵を繰り返していたのではないかと。つまり、ポーズとして・・・。)
この辺は、井伊と島津の虚々実々の駆け引きだったと思いますが、「討って出るぞ!」を匂わせて譲歩を引き出す以外に、斉彬に活路はなかったでしょう。
もっともこれは、関ヶ原の戦い直後に島津氏が採った戦略でもあり、その意味では、島津氏の伝統的な譲歩引き出し戦略だったとも言えるでしょうが、相手がこれに乗ってこなかった場合、どうなったのか・・・と。
                                  平太独白

by heitaroh | 2008-07-11 08:52 | 歴史 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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