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犬丸徹三青年がみた一流のガラス拭きの誇りの論理
親愛なるアッティクスへ

犬丸徹三と言う人物が居ます。
あの、帝国ホテル社長にして、日本のホテル業界を一流に引き上げたと言っても過言ではない人物です。

明治20年(1887年)石川県に生まれた犬丸翁は、旧制小松中学校(現・石川県立小松高等学校)を経て、東京高等商業学校(現・一橋大学)を卒業。
しかし、在学中、読書政治演説に力を入れ過ぎたことから、ビリから三番目の成績での卒業であったそうで、この為、就職先はなかなか見つからず、やっと、満鉄経営の長春ヤマトホテルに入ったものの、与えられた仕事は、ドアボーイだったとか。
このとき翁は、客に揉み手をして頭を下げる自分の姿が、何とも惨めに思えてしかたがなかった上に、さらに、母校の同窓生からは、「今、君がやっているような仕事は、わが栄光ある母校の名前を汚すものである!」という苦情を言われ、何とも忸怩たる想いを隠せなかったとか。

しかし、この中傷があったことで、翁は、敢然、一流のホテルマンにならんとすることを決意し、さらなる武者修行の場として、大正3年(1914年)8月、ロンドンに飛びます。
しかし、当てがあって、ロンドンに向かったわけでもないことから、なかなか、仕事は見つからず、ようやく、フェンチャーチ停車場近くの鉄道ホテルに勤務することになったものの、与えられた仕事は窓ガラス拭きだったとか・・・。
やがて、翁は、このくだらない仕事に段々と空しさを覚えるようになっていたそうで、あるとき、作業中に、相棒の老ガラス拭きに、「君は毎日、こんな仕事で満足しているのか?」とこぼしたところ、その老ガラス拭きは、黙って窓を指差し、「イヌマル!見たまえ、私が拭いたガラスには一点の曇りもない。窓ガラスは拭けばきれいになる。きれいになれば、私はそれだけで限りない満足を覚える。私は、この仕事を一生の仕事として選んだことを、少しも後悔していない」と言い切ったと・・・。

27歳の犬丸青年は、この老ガラス拭きの言葉に大変強い衝撃を受けたといいます。
「イギリス人は、己の仕事に、これほどまでに誇りをもっている・・・。それに比べて俺は何だ!」と。
阪急グループ創業者小林一三氏は、「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ!」と言ったといいますが、犬丸青年のこのときの心境は、まさしく、これだったでしょうか。
「与えられた仕事に懸命に取り組まずして、何が一流のホテルマンになる・・・だ!」と。

犬丸翁は、これ以後、どんな職場に移っても、「この心で貫こう」と決めたのだとか。
やがて、その仕事ぶりを認められ、帝国ホテル常務支配人だった林 愛作氏に招かれ、帝国ホテルの犬丸としての活躍が始まったわけですね。
後年、犬丸翁は、こうも言っています。
「一流と言われる会社にいる人が一流なのではない。一流の人間が働いている会社こそ一流なのである」と・・・。
                             平太独白
by heitaroh | 2008-01-30 08:56 | 経済・マネジメント | Trackback | Comments(10)
Commented by 松尾香里 at 2008-01-30 21:17
一流の人間が働いている会社こそ一流。
すごい、重い言葉です。
若いうちの苦労は買ってでもしろ、と言いますが。犬丸さんも小林さんも
素晴らしいですね…。
平太郎さんは色々と、素敵な人物をご存知ですね。
(記事と関係ありませんが)
日本映画は名作と呼ばれるものが多い反面、手をつけにくいと感じて
ましたが、黒澤監督の作品から始めてみようと思います。



Commented by mimishimizu3 at 2008-01-31 08:19
確かに・・確かに・・・
きっと博物館の窓をふいていた方たちも、そうおもっておられたのでしょうね。
Commented by へいたらう(管理人) at 2008-01-31 18:38
<松尾香里さん

世の中には、こういう思い言葉の反対のような人の方が圧倒的に多い物で・・・(笑)。
当然のことが当然のように実行される・・・というのは、本当に難しいことなんでしょうね。

クロサワ映画は凄いです。
素晴らしいのですが、実感としては、とにかく、凄いです。
「七人の侍」をみたとき、この人は、この時代に生まれていたんじゃないだろうか・・・と思いました。
是非、ご覧ください。
特に、女性は「赤ひげ」を見たら、号泣しますよ(笑)。

ちなみに、かつて、スピルバーグは、「映画がノーベル文学賞の対象じゃないのはおかしい。対象に加えるべきだ。そして、その最初の受賞者になる者こそクロサワであるべきだ」と言ったそうですが、彼に限っては、まったく、同感です。
Commented by へいたらう(管理人) at 2008-01-31 18:40
<mimishimizu3さん

職業に貴賤はないといいますよね。
職業に貴賤をつけているのは、結局の所、その人自身なのではないでしょうか・・・。

ちょうど、いいタイミングでしたので、TBさせていただきました(笑)。
Commented by D-KID at 2008-02-01 22:32
かっちょええ…

男児たる者この気概、見習いたい物ですね。
Commented by kaori_matsuo at 2008-02-02 08:17
アドバイスありがとうございます。「七人の侍」から手をつけてみます。
Commented by heitaroh at 2008-02-02 12:02
<D-KID さん

でも、世の中、この逆の人たちがいかに多いことか・・・と。
人は、他人の評価以上に自分を評価したがる物のようで・・・。
Commented by heitaroh at 2008-02-02 12:05
< kaori_matsuoさん

七人の侍は大作だけに始まりとしてはお勧めしません。
特に、本題に行くまでに長いんですよ。
そこが、クロサワのこだわりなんですけどね。
さいしょとしては、時代劇としては、用心棒や椿三十郎、現代劇としては、天国と地獄、生きるなどから入られた方がいいと思いますよ。
Commented by kimutin at 2009-07-09 14:17
犬丸の名言は何で見たんですか?なるべく早く返信お願いします!
Commented by heitaroh at 2009-07-09 17:33
<kimutin さん

申し訳ありませんが、覚えておりません。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱「財閥」の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

令和7年 19世紀ロンドンと東京。「描きたかったのは猟奇ではない。悲惨である」。「女王陛下の十手持ち」出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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