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古代ローマに見る良い仕事をしすぎたが故の作家の功罪 2
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きです。

「あまりにも良い仕事をしすぎた」という点での、司馬遼太郎氏のの部分、即ち、「司馬史観=史実」であるという誤解についてだが、これについては、実はかくいう私も、それに毒されていた一人である。
司馬翁の著書の中に、「坂本龍馬脱藩するに当たっては、の一人がそのを負って自害した」という記述があり、また、他の媒体でも度々、見かけたことから、これはてっきり、事実だとばかり思っていたのだが、以前、高知を旅した際に、「坂本龍馬記念館」(?)に行くことになり、道々、このことを、同行者に得意気に語ったところ、同館には、「この話については、事実としては確認されていない」と、大きく張り出されており、これには大いに面目を失うこととなったのである。

これ即ち、研究発表でない限り、極力、史実を基に描いたとしても、そこに作者の史観が影響してくるのはやむを得ないことといえるだろう。
この点で、塩野七生女史は、大作「ローマ人の物語」を著すことで、これまで、日本人にあまり馴染みがなかった古代ローマというものを、系統立てて、わかりやすく、それでいて、既存の学者の説をなぞるだけに終わらない、優れた逸品に仕上げた。

明治以降、日本人は、脱亜入欧というスローガンを掲げてきたわけだが、その是非は置くとして、それを掲げる以上は、最低、「ギリシャ・ローマ史」「聖書」くらいは(入信しないまでも)理解しておくべきではなかったか・・・というのが、常々の私の考えであった。
ただ、聖書はともかく、ヨーロッパ文明の基礎となった「ギリシャ・ローマ文明」については、これを、きちんと、系統立てて、しかも、基礎知識がない日本人にもわかるように詳述した良書は皆無であったのである。
(昔、私が学生時代には、日本人向けにわかりやすく、ローマ史の一部として系統立てて著した著作を探したのだが、書店では皆無だった。 カエサルアウグストゥスの名前は知っていても、彼らをモデルに描かれた著作は、小説ですら見つけ出すことは困難だった。)
日本人は、必ずしも、欧米に同化する必要はないが、その意味では、この書は必読の書であると思われる。
そこへ、この本が出た。
読んでみると、読みやすいし、わかりやすい。

だが、それだけに、ローマ帝国がきちんと機能している時代までを「理想的な政体」であるかのように描いているのは、少々、いかがなものかと思える。
それは、いかに素晴らしい政体であっても、現実には、既述のように、古代国家以外の何ものでもなかったからだ。
(無論、現代より優れた部分もあっただろうが。)
即ち、古代ローマとは、奴隷で成り立っていた政体であり、塩野女史は、「解放奴隷」などの救済措置があったことで、奴隷制度の現実を希釈しているようだが、もっと、これら負の側面についても詳述するべきではなかったか。
それらのことについては、貴族の平均年齢65歳に対し、奴隷の平均年齢20歳という数字が雄弁に物語っているだろう。
(最たる物は、剣闘士奴隷による大規模な反乱「スパルタカスの反乱」に対する部分での記述であろうか。塩野女史には、なぜ、こんな反乱が起きたのかが、理解できなかったのではなかろうか。)
                                 平太独白
by heitaroh | 2007-09-28 08:04 | 歴史 | Trackback | Comments(6)
Commented by D-KID at 2007-09-28 23:19 x
塩野女史の著作は僕も数冊読んでいるのですが、確かに仰るように女史の観点なのかややもすると賛美の文面であることが感じられます。
ただ『ローマ人の物語』という作品は“フィクション”という書評が大方みたいですし、女史も『歴史書』というよりは『ローマ人の所業』を描いたと言っているようですね。




『良い仕事をしすぎた』という点では、王監督。あまりにも偉大すぎて、采配に疑問符が付いてもアンタッチャブル…。
もうリーグ1位通過は絶望的ですねぇ orz


ただ、忘れもしない、一昨年のプレーオフ第2Sの3戦目。
9回裏0-4ビハインドからの神がかり的攻勢で逆転勝ちを収めた試合をライブで目の当たりにした者としては、そう易々と引き下がって欲しくない!と思い直した次第。
Commented by へいたらう at 2007-09-29 10:38 x
< D-KID さん

え?
あれって、フィクションなんですか???
内容的に、小説とは違ったもので、てっきり、主観の問題はともかく、フィクションだとはまったく思いませんでした・・・。
危うく、また、過ちを・・・(笑)。

もう、王監督は見てるだけで気が滅入ってきます。
特に負けると・・・。

先日、友人から、CSのチケットがあるけど、一位と二位の場合で、日にちが変わるがどうする?と言われました。
「一位になることはないでしょう。三位になることはあっても・・・」と申し上げましたのですが、早速・・・。
Commented by D-KID at 2007-09-29 22:00 x
うーん完全にフィクションとも言い切れないし、でも著者は歴史書とも言い切っていないようですし…
ただ、史料に基づかない記述や反証をせずに断定する書き方等を指摘する意見は多いようですね。













…ファイターズ優勝おめでとう、非の打ち所がない展開でした。
Commented by へいたらう at 2007-10-01 10:51 x
<D-KIDさん

>でも著者は歴史書とも言い切っていないようですし

歴史書・・・ではないにしても、ノンフィクションではない・・・ということなんですか?
私は、かなり、史実性の高いものだとばかり思っていました。

まあ、ホークスに関しては、実力相応ですよ。
問題は、ロッテです。
あそこだけが、私の予想ではもっと強かったはずなんですが、ここまで、日ハムに差を付けられるとは・・・。
あと、西武も、あそこまで弱くなるとは思いませんでしたけどね。

この辺は、いずれ、当初の予想とどう食い違ったかの展望と合わせ、書いてみたいと思っています。
Commented by sakanoueno-kumo at 2009-12-19 17:23
栄が龍馬の脱藩と関係ないということが立証されたのは、最近のことだったように記憶しています。これまで栄の墓とされてきたモノが間違いで、新たに別の場所に本当の墓が発見されたとか・・・。間違ってたらごめんなさい。私が坂本龍馬記念館に行ったのは平成3年ですが、この頃はまだ「史実」ではなくとも「定説」として紹介されていました。
司馬さんが「竜馬がゆく」を執筆されていた頃は、この説は生きていたわけで、ご本人もフィクションのつもりではなかったのではないでしょうか。
Commented by へいたらう at 2009-12-19 18:26 x
< sakanoueno-kumoさん

そうなんですか。
私が龍馬記念館に行ったのは平成13年くらいのことだと思います。
すでに、築10年以上経っていたんですね(笑)。(←って、そこかよって突っ込んでください(笑)。)

私も、榮という姉のことはそれ以上は知りませんが、確かに、龍馬が行くの中では、司馬さんも、少し確証がもてなかったのではないでしょうか、この姉の自害のことはさらっと流してあったような記憶があります。
むしろ、その後のドラマなどで、乙女姉よりも、こちらのほうがインパクトがあるからか、随分と大きな扱いになっていたような印象もありますね。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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