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黒澤明の映画にみる「あの戦争」における平等 後編
昨日の続きです。

「公平」という意味では、まあ、逆に言えば、日本には、それだけ、人を選んでいられる余裕がなかったということでもあるのでしょうが、ただ、この点で言えば、天皇家でも決して、その例外ではなかったように聞いております。
今のイギリスなどでも、そうでしょうが、ノブリス・オブリージュという古代ローマ以来の考え方があるヨーロッパでは、高貴な者ほど重い責任を負うということであり、となれば、もっとも高貴な者である王家の人間こそ、率先して国家の危難に立ち向かわなければならないという発想に至るようです。
チャールズ皇太子も、フォークランド紛争のときは従軍しましたし、今の王子たちも、イラクへ行くとか行かないとかいう話が持ち上がってましたよね。もっとも、一般兵士とは比べものにならないくらい守られているんでしょうが、だからといって、戦場に赴く以上、まったく危険がないというわけではないわけで・・・。)

その点では、まあ、さすがに天皇陛下その人は別でしょうが、他の皇族方は、結構、軍務に付いていたらしいですね。
明治以降の歴代天皇の弟たちは、皆、軍人でしたし、名目上とはいえ、閑院宮載仁親王のように、参謀総長などの軍務の枢機に預かっていた人も少なくなかったわけで、それなりに、前線に赴くこともあったらしいですよ。
さすがに、皇族は英王室同様、簡単に死ぬようなところには行かせないでしょうが、でも、軍部の連中からすれば、逆に、天皇の弟が「戦死」して、新たな「神社」ができる・・・というのも、国民の士気を鼓舞する上では、必ずしも悪い話ではなかったのかもしれません。
あるいは、誰か一人くらい死んでくれないかな・・・などという不埒なことを思っていた軍人もいたかも・・・。

この点では、庶民から天皇家まで、誰の頭の上にも平等に降りかかってきた「災難」だったからこそ、皆、諦めもついたわけで、逆に言えば、「平等」に降りかかってきた「災難」から、自分だけ逃れようとする者には国家の縛り以前に庶民感情として・・・、まさに、文字通り、庶民の「感情」が許せなかったのではないでしょうか。
実際、私が子供の頃、近所になぜか、妙に影が薄い老人がいましたが、どうやら、この方は、戦時中、何らかの方法で徴兵逃れをやったらしいということを下人参町町内会で聞いたことがあります。
(この辺のことは、現代でも、警察の取り調べよりも、マフィア同士の方が、犯人を割り出すのが早くて間違いがないことが多いように、政府はごまかせても、住民の目はごまかせなかったのでしょうね・・・。)

まあ、天皇家から庶民まで平等に押しつけられた大災難に対し、一人だけ、避け得た者が居る・・・となると、誰しも、「ふざけんなよ!」という気持ちにもなろうものかと・・・。
でも、想えば、巨匠・黒澤 明からすれば、この辺の庶民の心理というのは、おいしい部分でもあったんじゃないですか?
それを描かなかったことを考えると、この辺に、この時代の人の、あまり、触れたくない部分があったのかもしれません。
                              平太独白

by heitaroh | 2007-09-05 08:12 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by D-KID at 2007-09-05 23:48 x
は~、へいたらうサンのお祖父さんはなかなか正義感?が強かったんでしょうね(笑)


皇族から庶民まで平等に降りかかってきた災難とみるのは、何となくしっくりこないのですが…むしろ、『眼前の課題に対し国家全体として立ち向かわざるを得なかった、その点で高貴な者が率先して模範たるものを示さなければならなかった』、のではないかと思うのですが。

もっともそんなことを微塵も考えたことが無かった僕があーだこーだ言う筋合いは無いのですが…
Commented by heitaroh at 2007-09-06 10:24
<D-KID さん

正義感と言うよりは、「嫉妬」でしょうね。
「誰も行きたくなかったんだぜ!それを俺たちは行ったんだ。おまえだけがうまいことやりやがって」・・・という。
相手の方も、どうしても、負い目があるんでしょうね。
今、そういう事情を知って、そういう目で見てみたならば、むしろ、気の毒なほどに・・・でしたよ。

確かに、平等の度合いは違うでしょうね。
今のダイアナの息子たちも、イラクへ行くとか何とか言いながら、なかなか、行きませんが、行ったところで、一般の兵士よりは遙かに安全なところにいるのでしょうから。
その点は、プレスリーなどもそうだったでしょうね。
愛国心の広告塔に死なれては困りますから(笑)。

>『眼前の課題に対し・・・その点で高貴な者が率先して模範たるものを示さなければならなかった』

いえいえ、それをしない国王も多い・・・、いや、むしろ、そっちの方が多いでしょうか。
戦争始めて、多くの国民を殺しながら、負けたら、自分たちだけ亡命する王様なんて、別に珍しくないでしょうから(笑)。
いつの時代も、封建王朝とはエゴイスティックなものですよ。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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