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塩野七生女史の言に我が意を得たり2 二度目の中世へ
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きである。

塩野七生女史の大著、「ローマ人の物語」は、言わずとしれたローマ時代の歴史を系統立てて著した大作であり、この手の日本語のものに飢えていたこともあり、私も愛読させて頂いている。
もっとも、女史が一年に一冊、上梓してこられたように、私も、同時並行で、数冊を読んでいる身としては、自宅トイレで今年一年かけて最後の一冊を読み終えるつもりである(笑)。

さておき、女史は今年初めのインタビューの中で、「ローマ人の物語」が完結したことに触れ、「ローマの歴史は、普通は西ローマ帝国滅亡した5世紀後半で終わります。でも私は7世紀後半まで書きました。この時代は地中海の向こうにイスラムがかすんで見えてくる時代なんです。ここから中世が始まる。二つの一神教の世界の、大変な時代になる。『パックス・ロマーナ(ローマの平和)』という、ローマ帝国による国際秩序がローマとともになくなり、よく言えば群雄都拠、悪く言えば法律ではなく腕力暴力で支配する時代」になるかもしれないと述べておられたのだが、まあ、当時とは中国という物の存在ひとつをとっても前提にはないわけで、そのまま、往事と同じ、「キリスト教国家対イスラム教国家」という単純な図式にはならないとは思うが、それでも、女史の言われることを現代世界に当てはめたならばどうなるか・・・である。

まず、世界をリードする大国アメリカが衰亡するかどうか・・・ということだが、あの軍産複合体というものは、戦前の日本と同じで、倒れるまで走り続けるもののように思われる。
そして、今や、その軍産複合体依存体質はアメリカそのものと言っても良いほどになっており、それから脱却することはおそらく、不可能でありろう。
イラク出兵問題ひとつとっても、議会では、満足な議論が為されなかったことからもそれがわかると思う。
選挙に通るためには軍産複合体の支援に頼らざるを得ないからである。
その意味では、必ずやアメリカは衰退のスパイラルに入ったと言って良いように思える。

その上で、私は、古代ローマ帝国コンスタンチヌス大帝により、キリスト教国家へと転じた辺りのことは、イマイチ、どうにも、理解できていないのだが、これは、むしろ、今のアメリカにおけるメガチャーチと呼ばれるキリスト教系の巨大宗教保守団体の台頭を見ていると、何となく、わかるような気がしてくる。
人々は、自分の生活が苦しくなり始め、また、明らかに国家が行き詰まり始め、希望が見出せなくなると、敢えて、見たくない物は見ようとしない・・・、つまり、宗教への傾倒を深めるのではないだろうかと。
巨大宗教団体は、信者を集めることで、説教本などの印税寄付金などで財政は潤い、潤沢な資金は教会を一大レジャーランドに変え、さらに、人を集める・・・。
その結果、信者は教会・・・、いや、神職が推す人に投票するようになり、政治も、ますます、これらの力を憚るようになる・・・。
コンスタンチヌス大帝後は、ついに、司教・アンブロジウスが皇帝以上の勢威を得て行ったことに似ているように思えるのである。

マキャベリの政体循環論を考えるまでもなく、現代でも、これしか行き着く先はないのではないか・・・と、なぜか、そんな気がした。
その上で塩野女史は、上記のインタビューを、「もしかしたら今、世界は2度目の中世に入っているのかもしれませんね」と結んでおられたことが、何とも暗示的に聞こえた。

続きはまた明日。

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by heitaroh | 2007-07-18 08:44 | 国際問題 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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