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大河ドラマと映画の相違にみる風林火山の時代性 その2
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きです。

まず、大河ドラマの方では、山本勘助は必ずしも、武田家では歓迎されてませんよね。
むしろ、迫害されている・・・と。
これは、私自身も、昔居た会社で似たような経験があります。
「よそ者」、「新参者」ということもながら、それ以前に、他社で実績があった社員が、入社後、著しい営業成績を挙げることは、これまでの社員たちにとっては、自分たちの「無能」さをあげつらわれているようなものであり、それでなくとも面白くないのに、さらに、このまま、新参者たちが認められ続けていくと、これまで、喫茶店でさぼったり、営業に行くと見せかけてパチンコに行ったり・・・などと、いいようにやってきた自分たちの「既得権益」が犯されることにもなるわけで、その意味では、歓迎されないのは、まったくもっても、当然だと思うんですよ。
彼らとしては、「ほらね、社長、やっぱり彼らではダメだったでしょう!?」ということにならないと困るわけで・・・。

ところが、映画「風林火山」の方の山本勘助は、まあ、歓迎はされないまでも、それでも、割ととんとん拍子で実績を示すことができ、認められて、武田家の重鎮となっていくわけですね。
驚くべきは、そうなっていくことに何の違和感も持たないのです。
でも実際には、上述のように、こんなに順調に溶け込めるというのもあり得ない話なのですが、見ている最中には、それを感じないんですよ。
そういう、うまく行くことに、何の違和感も持たせない妙な説得力がこの映画にはありました。
で、それはなぜか・・・ということについて、少し考えてみたのですが、ひとつには、まあ、時代も高度成長期の、やることなすことうまく行った時代の作品・・・という時代背景もあるのでしょうが、それ以上に感じるのが、役者の重み・・・でした。

主演の山本勘助を演じたのは、日本を代表する大俳優・三船敏郎であり、その有無を言わせぬ一挙手一投足の重みは、不思議な説得力を持っていた・・・ということでしょうか。
(主役の三船敏郎の最期のシーンは、今見ても感涙にむせびますし・・・(笑)。)
さらに、中村錦之介扮(萬屋錦之助)する武田信玄の存在感もなかなかのものでしたし・・・。
特に、私が印象に残ったのは、セリフは一切無い、ゲスト出演的な感さえあった石原裕次郞上杉謙信は印象深かったですねぇ。
川を挟んで、武田軍が上杉謙信と対峙したシーンがあったんですが、馬を駆って行軍中に川向こうの武田方を睨むその男臭さに、思わず、「本当の上杉謙信という人は、こういう人だったんだろうな」と思ったほどでした。
(果たして、ガックンの上杉謙信がどういう味を見せるのか、ゲームキャラか、マンガ、「花の慶次」の登場人物にしか見えないんで、首を傾げながら見てます(笑)。)

翻って、大河ドラマを見たときに、主演の内野聖陽さんも、決して悪くはないのですが、やはり、重みという点では、やはり、あの時点で、「世界のミフネ」と呼ばれていた重量感という点では比べようもなく・・・。
ただ、その重みの無さが本当なのであり、おそらく、実際に山本勘助という人物がいたとしたならば、本人も、その軽さ故の悲哀を味わっていたであろうと思えることから、大河の方は、敢えて、重さを出さない演出を心がけているのかもしれませんね。
(内野サン自身も、大御所歌舞伎界の御曹司の中で似たような悲哀を味わってたりして・・・(笑)。何でおまえが主役なんだ・・・と。実際、昔、歌手の久保田利伸さんが夜のヒットスタジオの曲紹介場面でトリを務めたら、テレビに映ってないところで、某大物演歌歌手から蹴られたといいます。「何でおまえがトリなんだ・・・」と。)

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by heitaroh | 2007-06-19 08:38 | 文学芸術 | Trackback | Comments(2)
Commented by D-KID at 2007-06-19 23:08 x
いや~“世界の三船”と比するのは厳しいでしょう(^^;存在が大きすぎますよ。

山本勘助は仰るように出自が怪しく、軍師というより乱波のような存在だったとも聞きますから、今回のような描かれ方はある意味しっくり着ているかもしれませんね。


Gacktは…直江山城守兼続なんかいいんじゃないですか、兜の愛の御立てで(^^;
Commented by へいたらう at 2007-06-20 10:25 x
<D-KID さん

まあ、そうなんでしょうけどね・・・。
でも、脚本が重さを求めていれば、内野さんクラスの腕であれば、それなりの重量感は出すことが出来るんじゃないですか?
だから、単に役者の存在感だけではないように思ったんです。
それが、高度経済成長期の映画・・・と、リアル感を求める平成の大河ドラマいうことかと。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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