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兵と卒との違いに知る因果応報の軍人・宇垣一成の実像
親愛なるアッティクスへ

宇垣一成という人物をご存じでしょうか?
慶応4年(1868年)、備前国(現岡山県)にて農家の5人兄弟の末子として誕生、陸軍士官学校、陸軍大学校を経て、何度も総理大臣候補に推された人物・・・という経歴からは、頭がカミソリのように切れ、血も涙もないようなエリート軍人・・・だというふうに想像しがちですが、実際には、若い頃は決して出世が早いほうではなく、「鈍垣」などとあだ名されるほどであったとか。
実際、彼が頭角を現したのは戦闘や作戦などの軍人にとっての花形部門ではなく、「軍政」においてだったといいます。

私も、この宇垣一成という人物に対しては、陸軍省課長時代の大正2年(1913年)、第一次山本権兵衛内閣において軍部大臣現役制廃止・・・、つまり、「内閣の陸海軍大臣は現役武官でなければならない」となっていた物を「予備役」・・・つまり、「OBまでOKよ」としようとしたときに怪文書までばらまいて強行にこれに反対しておきながら、その後、昭和12年(1937年)に自身に組閣の大命が下ったときは、今度は、その手腕をおそれた現役中堅軍人らによって、その「軍部大臣現役武官制」を盾にとられ、逆に組閣を断念させられた・・・という因果応報というべき失態から、決して、いい評価は持ってませんでした。

で、先日、たまたまある古書を読んでいて、この人物についてのことが出てきたのですが、この人は、明治の終わりにドイツ留学に行った際には、「単に軍務だけにとどまらず、国家全体のことについて勉強したい」と言い、さらに、当時の書簡には、軍の軍法会議の閉鎖性などについての批判を始め、なかなかに、先進的な考えが見て取れるとか。
で、中でも、印象に残ったのが第1次若槻禮次郎内閣の陸軍大臣時代、それまで、志願してきた人を上等兵以上の「兵」とし、徴兵された人たちを一等卒、二等卒などの「卒」としていたのを、全部、一等兵、二等兵などの兵に改めたということでした。
(つまり、「兵」というのは、文字通り兵士だが、「卒」というのは、言うならば、従僕、下僕でしかなく、待遇面でも劣悪だったとか。)
これは、働き手を戦争に取られた上にたばこ代まで仕送りさせられているという庶民の実態に対し、大いに違和感をもったからだといいますが、こう考えると、この人物は、開明的なのか保守的なのか、軍人なのか政治家なのか、切れ者なのか愚鈍なのか、非情なのか恩情なのか・・・、何ともとらえどころがない人物のようで、私も簡単に評価を下すことができないように思います。

ただ、その意味では、こういう人物でないと、あの太平洋戦争の破局へ突き進もうとしていた時代の舵取りは出来なかったのではないかと。
そして、それがわかっていたからこそ、彼が総理の座に着くことに「脅威」と感じた人たちがいたと。
誰がやっても無理だったのだろうとは思いますが、わずかでも可能性があったとしたならば、宇垣だけだったような気がします。
                               平太独白
by heitaroh | 2007-06-14 08:49 | 歴史 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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