親愛なるアッティクスへ
15年くらい前でしょうか、私は草野球に引っ張り出されたことがあります。
すでに、その段階で、もう、10年くらい、まったく野球をやってませんでしたから、久々、打席に立ったところで、当然、打てるはずもなく、3打席ノーヒットで、最後の4打席目を迎えました。
で、それなりに考えました。
まず、変化球には、まるで、目が付いていけないから、打てるとすれば直球だけだなと。
であれば、ストレートだけに的を絞ろう・・・と。
それで、カーブを三球続けられたら、一球も振らずにごめんなさいで帰ろうと・・・。
このとき、私の考えの根拠となったのが、まだ、売り出し中だった頃の野村克也氏が、初めてオールスターに出たときの話でした。
同点で、9回裏走者3塁となった場面でノムさんに打席が回ってきたところ、ここでセ・リーグは、当時、全盛だった、国鉄の金田正一投手をマウンドに上げたそうですが、ノムさんがベンチでその投球練習を見ていると、当時のカネやんの直球は、もの凄く速く、うなりを上げてミットに突き刺さっていたとか。
ノムさんは、これを見て、「これは、とても打てそうにないな・・・」と思ったそうです。
で、「ストレートはとても打てない。もし、打てるとすればカーブだけだな」と思い、カーブだけに狙いを定めて、打席に立ったとか。
もし、ストレートが3球来たら、「ごめんなさい、失礼しました」と言って、さっさと帰るつもりだったと。
すると、初球、カーブが来たそうで、「これしかない!」と思って、思い切り振ったら、三遊間を破りサヨナラ打になったとか。
試合後、カネヤンもカッカきていたようで、「ノムのやつは、よう、わしのカーブを打ちよった」と
放言したそうですが、逆に、ノムさんは、これを聞き、「もの凄い、
自信になった」と言ってました。
まあ、それほど、当時のカネやんの実力はぬきんでていたと言うことなのでしょうが、逆に言えば、
「自分には、これしかカードがない」という場合、そのカードを使うしかないわけで、となれば、相手に、そのカードを切らせる
駆け引き上の工夫などは必要でしょうが、やはり、基本的には
「それだけを狙い」、それが来なかったら、あるいは、それさえも通らなかったら、潔く、「ごめんなさい、失礼しました」で帰ってくる・・・、もっと言えば、
「腹を切る」という
「覚悟」が必要なのではないかということです。
ちなみに、私のその最後の打席は、それほど甘くはなく、ストレートを2球ほど打ち損じた後、ようやく、
四球を一つ選んだだけでした(涙)。
平太独白