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勧善懲悪的倫理観無用 水滸伝的中世中国現実社会。
親愛なるアッティクスへ

以前、平太郎独白録 「南総里見八犬伝にみる山田風太郎に想う天徳内裏歌合。」の中でも触れたことの続きとなる話だが、昭和48年のテレビ番組に、当時の子供たちを魅了したNHK 人形劇 「新・八犬伝」というモノがあった。
私もこれに触発されて、小学校の図書室で、これら「南総里見八犬伝」「水滸伝」といった本をむさぼるように読んだのを覚えている。

それから月日が流れ、また、最近、当時、むさぼるように読んだこれら名作という物の、本来のものを、つまり、子供向けのモノではない、大人向けの物の名作と呼ばれる物を改めて、読んでみたいと思うようになった。
そこで、早速、書店に出かけてみたのだが、これだけの名作であり、長い間、支持されてきた作品に拘わらず、なかなか、おメガネにかなうモノがない・・・。
そうやって、ようやく探し出したのが、山田風太郎著、「南総里見八犬伝」であり、津本 陽著、「新釈 水滸伝」 であったわけだが、山田八犬伝の方は、先述したように、平太郎独白録 「南総里見八犬伝にみる山田風太郎に想う天徳内裏歌合。」で述べたので、今回は、もうひとつの津本「水滸伝」の方について述べてみたい。

e0027240_10204462.jpgまず、なぜ「新八犬伝」に続けて「水滸伝」が出てくるのかというと、実は、同時期に放送されていたテレビに中村敦夫主演、「水滸伝」というドラマがあったからである。
(共演陣も、毎回総出演ではなかったが、当時のオールスター・キャストと言ってもいいほどの顔ぶれであった。)

当時はまだ、こういう中国を舞台にしたドラマなどはテレビでは珍しく、子供の間でも結構、話題になった。
背景には、田中角栄政権による日中国交回復というものがあったのだろうが、そもそも、八犬伝と水滸伝だが、両書は元々、深い関係にあるという。
八犬伝の作者、滝沢馬琴は、この本を書くとき、水滸伝をモデルにしたと言われているからだ。
だが、書店では、水滸伝は、八犬伝と違い、それ自体の数はあるものの、なかなか、お眼鏡にかなうものが呆れるほどに無い。
ようやく見つけ出したのが、この津本「水滸伝」であったわけだが、それを読んでみて、とにかく、驚いた。
そこにいたのは、勧善懲悪的倫理観などとは無縁の、生身のオトコたちであり、現代日本人の倫理観に阿ることのない、当時の中国社会そのものであったからである。

一例を挙げるなら、悪人が水滸伝の主役、梁山泊の英雄たちに捕らえられたとき、彼らの前で、梁山泊の下っ端が悪人に対し、「おまえの肉を食ってやる!」と罵るのだが、それを見ていた兄貴たちが、「もういいだろう。ひと思いに殺してやれ!」と言うかと思いきや、何と・・・、皆で普通に・・・、この悪人を食ってしまうのである。
現代日本人的倫理観から言うと、ゲロゲロと思うような話だが、これが当時の中国社会の現実であり、現代日本人が己が倫理観を押しつけるべきではないと私は思う。

三国志だったかと思うが、その中に、旅客をもてなす為、その家の夫人が自ら命を絶ち、自らの肉を供出する・・・という場面があった。
夫は悲しみを胸に秘めたまま、その夫人の肉を旅客に振る舞う・・・のだが、やがて、客は夫人の姿が見えないことに気付き、今、自分たちが食べている肉が夫人の肉だとばれてしまう。
現代日本人的には、「これ、妻の肉です」なんて言われた日にゃあ、「おのれ、こんな物食わせやがって!」という話になるのでしょうが、古代中国ではこれは「美徳」とされる話であり、実際、旅客らも真実を知って感動したという筋書きとなっていた。
同じ物が、日本人の手に掛かれば、「鎌倉幕府執権・北条時頼が旅の途中、身分を隠して、貧乏御家人の家に立ち寄ったとき、この御家人が客をもてなす為に、自分の大事な盆栽を火にくべた・・・」という、学校の教科書にも載っていた話になるのだろう。
そういう意味で、この津本水滸伝こそは、「本物の水滸伝とはかくありや・・・」と思わされる逸品であり、原作に近いであろう物を求めていた私には、非常に満足できるものであった。
                              平太独白
by heitaroh | 2007-01-19 08:35 | 文学芸術 | Trackback | Comments(2)
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Commented by ほんのわ at 2007-01-19 21:53 x
こんにちは、はじめまして。
トラックバック頂きましたほんのわです。
拙い記事をお読みいただきありがとうございました。
ブログを始めて三ヶ月、トラックバック頂くのが初めてなら、こうして人様へコメントするのも始めてですが、その相手が作家さんとは!
感激です。いい記念になります。
さてわたしもNHKの人形劇を楽しみに観ていた世代なので、楽しく拝見しました。
テーマ音楽もちゃんと覚えてますよ。
『水滸伝』の方は当時まったく筋を掴むことができませんでした。
登場人物が百八人で、人数も距離も大きさも何もかもが桁が大きく、あっけに取られた記憶があります。
戦記物はこれまであまり読んでこなかったので平太郎先生の話にどこまで付いていけるかわかりませんが、またお邪魔したいと思っています。
宜しくお願いします。
Commented by へいたらう(管理人) at 2007-01-20 11:55 x
<ほんのわさん

過分なお言葉有り難う御座います。
また、栄えあるコメントとTBの第一号にもさせていただき、有り難うございました(笑)。

私の場合、著書があるとは言え、何ら、道楽の域を出てませんので、作家とか先生などと言われると、気恥ずかしい限りです。

当時、テレビドラマになっていた水滸伝は、予算の関係もあったのでしょうね、そうそうたる俳優陣が出ていた割には、全員揃うシーンは殆ど無く、一話完結でしたので、子供にも「水戸黄門」感覚で楽しめました。
ちなみに、堺正章主演で大当たりした「西遊記」もこの、「水滸伝」の流れのようです。

ということで、これに懲りず、今後とも宜しくお願いします。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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