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市村 清のそのチャイムを鳴らせ!ツキは姿勢にあり。
親愛なるアッティクスへ

本日は年末に相応しい(?)お題をひとつ・・・。
市村 清という人物をご存じでしょうか?
コピー機で有名な「リコー三愛グループ」の創業者で、その強烈な個性と不屈の闘志でもって、一代にして、大を為した人物ですが、特筆すべきは、阪急小林一三翁と双璧を為すほどの大変なアイデアマン社長であったことでしょう。

市村 清のそのチャイムを鳴らせ!ツキは姿勢にあり。_e0027240_10274818.jpg一例を挙げるならば、今の結婚式の主流である神前結婚式のシステムを作ったのもこの人だそうですね。

戦後の混乱期、財政難で苦しんでいた神社から相談を持ちかけられた市村翁が考えたのが、「神前結婚式」だったとか。
確かに、言われてみれば、戦前までは、神社で神主の前で結婚を誓うなどというのは、あまり、映画などでも見かけた記憶はないですよね。

市村翁は、明治33年(1900年)、佐賀県三養基郡北茂安村(現佐賀県みやき市・・・だと思います。わかりやすく言うと吉野ヶ里遺跡の辺り。)に生まれ、苦学して、銀行に職を得たもののえん罪から投獄され、昭和2年(1927年)、27歳の時、失意のうちに帰郷。
で、当時、すでに妻帯していたこともあり、家族を養う為、高い歩合給がとれる保険会社に新たな職を求めたものの、保険と言っても、何せ昭和初期のことですから、当然、保険自体を知らない人たちの方が多いわけで、中でも、熊本はその保守的な県民性から、不毛地帯と言われ、誰もが尻込みする地域だったとか。
その熊本が任地と決まった翁は敢えて焦点を難攻不落といわれた知識層に絞ったそうで、それは、難攻不落ではあるものの、誰か一人と契約を結べば、逆に、口コミで次から次へと広がる・・・とのヨミだったようですが、それだけに悪戦苦闘を強いられることになります。

ちょうど今頃の季節、初冬の寒い中、早朝から夜半まで自転車を踏み、特に、雨風の日は、むしろ勇んで勧誘に走り、また、同じ人物を間をおいて何度も訪ね、さらに、夜は訪問した人にお礼の手紙を書き、為に、幾度も推敲を重ねたとも言います。
ところが、11月が過ぎ、12月も半ばを過ぎても、一本の契約すら取れない・・・。
これには、さすがの翁も「もう、だめだ」と弱音を吐き、ある晩、妻に「東京へ逃げよう」と呟いたそうです。
このとき、妻が、「いつでも夜逃げはできます。もう少し、せめて暮れまで頑張りましょうよ」と言ったことで、やむなく、翁は気を取り直して、翌日、これが最後だ・・・として、それまでで一番、望みが持てそうな、ある校長先生の家を訪ねたとか。

ところが、その家の前まで行った翁は、呼び鈴を押すのを躊躇します。
しばらく、門の前を行ったり来たりした後、遂に意を決して呼び鈴を押したところ、この家の主人は、翁のこれまでの熱意に打たれ、契約をしようと思い、印鑑を持って翁が来るのを待っていたのだそうです。
さらに、その人物は、自身が契約したばかりか、知人すべてに紹介状を書いてくれたそうで、さすがに当時の校長先生の信用はやはり相当な物で、あれほど獲れなかった契約が嘘のように、燎原の火の如く、次から次へと獲れたとか・・・。

私も、昔は飛び込みの営業などもやったことがありますので、翁のこのときの気持ちは痛いほどよくわかります。
チャイムを押すのを躊躇してしまうんですよね。
露骨に「また来たのかよ!」みたいな顔されると思うと・・・。
まあ、ある程度は、慣れますけど・・・。
でも、やっぱり、人は、いつも、「このチャイムの向こうには、相手が印鑑を持って待っててくれるかも知れない・・・」と思うべきなのでしょう。
少なくとも、もし、このとき、翁が呼び鈴を押すのをやめ、そのまま去っていたら・・・、前夜、妻と共に東京に夜逃げしていたら・・・、後の大経営者 市村 清はなかったのかもしれません。

売れない時代の武田鉄矢さんも、同じようなことを言っておられましたね。
どん底の一年が終わろうとしていた年末に、奥さんから、「そんなに悪いことばかり続かないでしょう。気分を切り替えて来年は頑張ろうよ」と言われ、そしたら、年明け直後に、映画出演の話が舞い込み、その後、トントン拍子に今日に至ったのだとか。
矢沢永吉さんも同じような話をされてましたね。
「ツキ」を呼び込めるかどうかは内助の功も含めた自分自身の姿勢にあるのかもしれませんが、少なくとも、そのチャイムを鳴らすのを放棄する人に「ツキ」が来ることはないでしょう。

そんなこんなの年末です。
とりあえず、チャイムを押してみましょうや、御同輩。
ひょっとすると、ドアの向こうではお茶を入れて待っててくれているのかもしれませんぜ・・・。
                               平太独白
by heitaroh | 2006-12-07 08:05 | 経済・マネジメント | Trackback | Comments(2)
Commented by tokkey_0524zet at 2006-12-08 01:25
私の場合、チャイムを押してもベルさえ鳴らなかったりしてw。
Commented by へいたらう at 2006-12-08 10:41 x
<tokkey_0524zetさん

その可能性は否定出来ません(笑)。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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