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バルトの楽園シリーズその6 健康保険組合
親愛なるアッティクスへ

先般、申し述べました大戦中のドイツ兵俘虜(捕虜)収容所について書かれた大著、「板東俘虜収容所―日独戦争と在日ドイツ俘虜」について、まず、一番、驚いたのは、この板東収容所に幽閉されたドイツ人捕虜たちは、収容所内で健康保険組合を作っていたそうですね。
そのおかげで、大正7年(1918年)、当時、折から、世界中に猛威を振るったインフルエンザ、通称、スペイン風邪が日本にも上陸したとき、日本人を始め、他収容所などでも死者が多数出たのに対し、板東収容所での死亡者はわずか、3~4名だったとか。
で、単に健康保険組合と言いますが、驚くべきは、その財源の確保方法です。

その前に、少し、説明が必要になると思いますが、ドイツでは、「俘虜は勤務の一形態」ということで、俘虜になっている間も給料は出るし、それどころか、昇進さえするそうですね。
さらに、俘虜は労役に着き、当然、日当をもらうこともできたそうで、直接ではないにしても手元に置くことが出来たとか。
すでに、工業が発達していた名古屋収容所などでは、需要があったこともあり、俘虜たちは結構、稼いでいたそうで、そうなると、もう、それだけで、そこに一つの消費地域があるようなもので・・・。
今の感覚なら、こんな収容所を我が町に持ってくるとなると、総論賛成各論反対で、反対運動が起こりそうな気もするのですが、当時は、反対どころか、誘致合戦だったそうです。
つまり、軍隊が守ってくれて金を落としてくれる・・・ということでしょう。

で、つまり、そういう風で、俘虜たちは、金はある・・・ということでなども買うことが出来たことから、当初、健康保険組合を運営するに当たっては、そこで買ったビールに消費税を掛けて、財源としようとしたようですが、そうなると、貧しい兵隊から不公平だとの不満の声が相次いだそうで(いわゆる、貧富の格差ですね。)、その結果、何と、以後の負担額は「自分で出せると考えた額を自己申告する」としたとか・・・。
つまり、「申告者を信じる」・・・というわけです。

ちなみに、日本で健康保険法が実施に移されたのは昭和2年(1927年)のことだそうですから、如何にそれが革新的なことだったかがおわかり頂けると思います。
もっとも、状況の過酷さには雲泥の差があったとは言え、日本人は、その後、シベリアで抑留されたときにも、健康保険組合を作ろうなどとは発想も出て来ておりませんし、それどころか、平太郎独白録 「二日酔いにみる撤退と転進の大本営的考察」で申し上げましたように、抜け駆けで異常に働いて、自分だけ食糧にありつこうとする者が続出し、結果、過労死が続出したなどと言いますから、まあ、「申告者を信じる」以前の問題だったでしょうか・・・。

で、この収容所内健康保険組合ですが、さらに、芝居、音楽会などのチケット販売益、さらには、宝くじの販売益なども財源としたと言います。
そして、スペイン風邪の流行に当たっては、「うがいの奨励」や、「治った後の音楽活動の不可」などという健康啓蒙活動にも力を入れたとか・・・。
これが、スペイン風邪の被害を最小に抑える上で、大いに効果が上がったそうです。
                              平太独白
by heitaroh | 2006-09-14 18:06 | 社会全般 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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