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バルトの楽園シリーズその5 傑作!嗚呼、脱走兵!
親愛なるアッティクスへ

で、バルトの楽園シリーズの第三弾です。

先日から、触れております、「板東俘虜収容所―日独戦争と在日ドイツ俘虜」ですが、これによると、第一次世界大戦当時の日本のドイツ兵捕虜収容所が、すべてに「バルトの楽園」と言われた板東収容所のように上手くいっていたわけではなく、先日の平太郎独白録 「バルトの楽園が福岡では・・・その4 久留米俘虜収容所編。」の中で触れた、日本の「ナチス強制収容所」と酷評された久留米収容所のような存在もあったことがわかると思います。
さらに言えば、「バルトの楽園」では見えてこなかった事象の一つに脱走者の存在が上げられるようです。

ちなみに、日本国内の収容所からの脱走者は6名。
そのうち、5名が、我が、福岡収容所からの脱走であり(残る1名は静岡収容所よりの脱走。出国に至らず。)、これら5名は、そのすべてが大陸に渡ることに成功し、うち4名中国に到達、さらに、そのうち1名は実際に、ドイツまで帰り着き、再び西部戦線に身を投じたとか・・・。
まあ、もちろん、福岡の場合、大陸に近いという特殊な事情があるのだろうとは思いますが、どうにも、福岡らしいと言えば言えるような・・・。

この辺のことを具体的に記しておきますと、うち、モッデ少尉は朝鮮半島で逮捕されたものの、ザクセ少佐シュトレーラー中尉は、偶然、上海で出会い、アメリカに渡り、ニューヨークから、ノルウェー船に潜り込んで渡欧しようとしたところを巡検中の英国海軍に発見され、マン島英国収容所に収容。
また、ヴェンクシュテルン少尉スコットランドの島の港に居るところを逮捕され、同じく、マン島の収容所で終戦を迎える。
5人のうち、ケンペ中尉のみが、上海、シベリア、ノルウェーを経て、ドイツ本国にたどり着いた・・・というわけですね。
さらに、脱走に失敗したものの、ドイツ側資料には「脱走王」と記されたアルテルトなる人物もいたようですし、逃亡幇助>までいれると、実際には、40人を超える処罰者がいたようです。

バルトの楽園シリーズその5 傑作!嗚呼、脱走兵!_e0027240_1038994.jpg以前、平太郎独白録 「バルトの楽園が福岡ではザルデルン夫妻の悲話・前編。」と、同じく、平太郎独白録 「バルトの楽園が福岡ではザルデルン夫妻の悲話・後編。」で触れたザルデルン夫人も、このとき、脱走兵を手引きしたという嫌疑を掛けられ、憲兵より尋問を受けています。

(←往事、ザルデルン夫人が住まいした簑島土堤の雰囲気を、唯一、現代に伝えてくれそうな場所です・・・。)

で、まず、それら脱走兵の脱走目的ですが、「苦戦を強いられている祖国の為に、再び、戦線に参加することを欲した」という脱走兵と、「柵外での散歩遊興の為」の脱柵兵とがあったそうです。

前者の方に関しては、上述した以前に、俘虜の法的立場や、日独の俘虜に対する価値観の相違・・・などといったものについても言及しないといけませんので、これら重たい物は、これ以上は、また、別稿に譲るとして・・・後者です。
俘虜の中には、なかなかに豪の者もいたようですね。
九州に置かれた収容所の一つ、大分収容所は、たびたび、脱柵する者が多かったようで、同書によると、その中には、こういう事例もあるとか・・・。

「大正7年2月9日夜、少尉ゲオルク・キュールポルン(29歳)は、従卒ナーゲール (26歳)、ダウデルト(30歳)と共に収容所を脱出して、カンタン遊廓春日楼に登楼した。
三人は、みごとな手跡で、「高松市本町 長野正(22歳)、高山留一(20歳)、中山信一(30歳)」と記帳するや、小福、美代吉、秀勇を相娼に、一人5円20銭を支払って、愉快の最中、憲兵に捕らえられた事件はおよそ傑作であった。
少尉は謹慎、従卒2人は営倉30日は高い春宵一刻の夢代であった・・・」と。

ていうか、普通、気付けよ!と(笑)。
いくら字が達筆でも、顔もしゃべり方も違うだろ・・・と。
ま、何人でも、金を払ってくれる以上、客は客・・・というところでしょうが。

ていうか、どうして、ダウデルトだけ、年がそのままなんだ・・・と(笑)。
自分ともう一人の従卒は、サバ読んで若く書いておいて、ダウデルトだけ、思いっきり実年齢やないですか。
つまり、「ダウデルト、おまえは老けとる・・・」と(笑)。
                                 平太独白
by heitaroh | 2006-09-08 08:35 | 歴史 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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