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苦労というものの功罪・後編、苦労に値する人間。
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きです。

この辺は、以前、平太郎独白録 「驕れる者も久しからず」でも触れたことですが、その矛先は、源氏一門であろうとも容赦はなく、木曾義仲敗死後、人質ながらも、自分の娘の婿としていた義仲の嫡男、義高を斬殺し、静御前が産んだ源 義経の遺児も、誕生すると間もなく、生き埋めにされて殺されました。
頼朝の、こういった行動が、結果的に源氏一門を細らせることになってしまったことは間違いないことのようで、実際、頼朝の死後まもなくして、頼朝の直系子孫は、いずれも悲惨な形で絶えることになります。

平家は、頼朝を生かしておいたから滅びたのではなく、驕り高ぶるあまり、人心に見放されたから滅びたのであって、もし、平家政権の支持率が高かったならば、いかに頼朝や義経が生きていようが出番はなかったと思います。
(まだまだ、侮れなかった天皇権力を始めとする既成の権力を軽視したゆえに滅びたという見方もできるでしょうが、そういう、政治的識見の低下も、結局は驕りがあったからでしょう・・・。)

苦労というものの功罪・後編、苦労に値する人間。_e0027240_15445648.jpg現実に、平家の大軍を都から放逐したのは、義経でも頼朝でもなく、木曾義仲だったのですから・・・。
(←義仲が平家の大軍を壊滅させた倶利伽羅峠に佇む碑。得意の絶頂にあった義仲は、これから間もなく訪れる己が凋落と、それに伴う我が子の悲劇にまで思いは及んでいたのか。)

ただ、我が子を人質に出した時点での、義仲の状況判断は、三国干渉の時の明治政府と同様、驚くほど的確だったと思います。
しかし、であればこそ、なおのこと、頼朝とは徹底して対立してはいけなかったのではないか・・・。
何より、頼朝という人の凄惨なまでの、酷薄な性格に考えは及んでいたのか・・・。
あれほどまでに、冷徹な政治判断を下した男が、この倶利伽羅峠の大勝利を境に政治音痴の軍人に成り下がっていったのが、私には、どうにも解せません。
貧すれば鈍するということなのか。
いずれにしても、諸行無常の響き有り・・・でしょうか。)

しかし、そうは言いながらも、自らも同様の体験をしたことで、頼朝を尊敬していた徳川家康などには、このような、いたずらな猜疑心というものは、あまり見受けられません。
同様に、こういった経験を経てきた人物としては、始皇帝は頼朝的であり、ユリアヌス帝は家康的だと言えるようです。
まあ、とどのつまりは、「苦労をすること」自体良いとしても、やはり、「苦労しても人間性が歪められないかどうか・・・」、つまりは、「苦労をするに値するだけの人間かどうか・・・」がすべてなのでしょうか・・・。
                                平太独白
by heitaroh | 2006-05-11 08:43 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by tokkey_0524zet at 2006-05-12 22:29
 永井路子著「北条政子」における義高と大姫の〝小さな恋のメロディ〟には泣かされました(感涙)。
 結果として頼朝は自分の娘をも精神的に「殺して」しまったんでしょうね。
 義高にも義経同様後世の同情からか「落ち延び伝説」があるそうで。

 義高を人質に出したのは義仲個人の考えではなく周囲の入れ知恵もあったのかも知れませんね。
 「経験」と「(それをする)人間の頭」については私もちょっと言いたい事があるんですが、これはいずれ自分のブログにて。
Commented by へいたらう at 2006-05-13 11:50
>tokkey_0524zetさん

私はむしろ、大河ドラマ「草燃える」で、義高と大姫の仲を引き裂いても、義経を殺しても、「育ちの良さ」でカバーしていた石坂浩二さん扮する頼朝が、義経が討ち取られた場所へ行ったとき、もう、こらえきれないって感じで号泣したのが印象に残ってますね。
意外と、そんなのものありかな・・・って気もします。

義高を人質に出したのが、周囲の入れ知恵であったとするならば、項羽におけるはんぞうのような、相当に優秀な政治顧問がついていたのでしょうね。
そして、何らかの理由でその人がいなくなり、単なる政治音痴の軍人と化してしまったと。
そう考えるのが、一番、流れ的も納得出来るのでしょうが、何だか、出来すぎって気もしますね(笑)。

>「経験」と「(それをする)人間の頭」については

期待しております。
人一倍、貴重な経験をしてこられたものとお察し申し上げます・・・(笑)。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱「財閥」の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

令和7年 19世紀ロンドンと東京。「描きたかったのは猟奇ではない。悲惨である」。「女王陛下の十手持ち」出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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