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遅れてきた志士、筑前福岡藩士 明石元二郎 中編。
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きです。

私は、今から、二十年くらい前に「情報将軍 明石元二郎―ロシアを倒したスパイ大将の生涯」という本を読んだのですが、その中で、明石元二郎レーニンと初めて、相対するシーンが出てきます。
レーニンは、最初に、労働者が吸う安い煙草に火をつけながら、こういったそうです。
「われわれの運動を支援したいという申し入れですが、戦争相手の日本政府から金をもらっていたことがわかったら、民衆は私のことを何というでしょう?レーニンの民衆革命不純な動機からはじまったのだ、と私を非難するでしょう。」
レーニンの言い分は、レーニンの立場に立ったなら、至極、当然のことであり、この話を聞いたとき、まだ、20代半ばだった私は、思わず、ぐっと詰まってしまったことを覚えています。
しかし、これは逆に言えば、「誰からも非難されない大義名分があれば協力したい・・・。」と言ってるようなもので。

もとより、こういう話に議事録などあるわけもなく、話がどの程度、真実なのかはわかりませんが、これを読んだ限りでは、まさしく、国際舞台で相手を説得する上で、教科書となるような会話だったように思えました。
(以下、少し長いのですが、この大著より一部、抜粋致します。)

-------------------------
明石は、「レーニン君、私は君を見損なった!」と一喝し、こう続けたと言います。
「そうじゃありませんか。私は共産主義には詳しくないが、共産主義の始祖・マルクスは過去の制度や社会組織、風習を打ち破って、新しい秩序を作ろうとした……。ところが、あなたはいまだに祖国だの皇帝だの同一民族だのと、古い考え方にこだわっている。いいですか?お互いに目的は一つです。あなたはロシアの帝国主義に侵略された人々を糾合して、ロシアに革命を起こして社会主義の国を建設しようとしている。私は日本の自衛のためにロシアに対する戦争を支援しようとしている。どちらもペテルブルクの政府を倒すという目的では同じではありませんか?他人がどういおうと、革命が成功すれは、それは民衆の幸福であり、レーニンの名は民衆の組織者として永久に残るでしょう。しかし、小さな道徳論にとらわれて失敗すれば、レーニンの名は忘れられる。

君は祖国を裏切ることは、革命の同志やロシア人に具合が悪いというようなことをいう。しかし、君はロシア人ではない。タタール人ではないのか?タタール人の君がロシア人の大首長であるロマノフを倒すのに、日本の力を借りたからといって、何が裏切りなのかね? 大体、いまのロシアのはとんど全部が、十六世紀までは君たちタタール人の国だった。君たちはいうまでもなく、かのチンギスバン大王子孫なのだ。それが十五世紀の終わりにロシア人のイワン三世モスクワ大公国を立て、イワン四世(雷帝)のとき、全ロシアのツァー(皇帝)を宣言するころからタタール人に対する圧迫が激しくなり、やがて各地で敗北したタタール人は、母国のモンゴルに帰り、一部がカザフを中心とする一帯に残ったのだ‥…。私のロシア史の認識は間違っているかね? レーニン君、君がどこかの国の援助を受けて、イワン雷帝の子孫であるロシアの宮廷を倒しても、それは当然の権利回復であって、なんら道義にもとるものではない。そうではないかね? レーニン君。

どうです? 必要なだけの資金を回しましょう。返却は無用です。見返りの代償は不要、私の方は政府の、いや参謀本部の作戦用の機密費です。
謀略は秘密作戦です。そう秘密です。秘密に君に金を融通して、秘密にロマノフの背中を衝くのです。もちろん、一枚領収書も、誓約書もいりません。いかがですか? 秘密ということは、全面的に相手を信頼するということです。男と男の約束です。私は絶対に金のことは口外しません。もちろん、必要に応じて参謀本部に報告しますが、当然、参謀本部も自国の機密費の内容を公開するなどというばかなことはやらないでしょう。」
-------------------------

まずは、古い考えを捨てろという、よくある一般論から入って、お互いにお互いを必要としている、目的は同じだ!という現実論に始まり、民衆の幸福、レーニンの名誉というタテマエと本音を並べ、それでも、レーニンが納得してないとみるや、一転、日本人が知るはずもないようなタタール人にとってのロシア史観を語り、チンギスハンの名前を出して奮い立たせ、ここで、おもむろに金の話を出し、最後に、ばれないことを言って聞かせて安心させる・・・。
一切の無駄を省いた・・・、それでいながら、言うべき事を言うべき順番で述べ、掘り下げるべき所は余すことなく掘り下げて語った、惚れ惚れするような見事なトークだと思います。

日露戦争後陸軍内部では、「明石一人で陸軍10個師団に相当した。」と言われたそうですが、司馬遼太郞氏に言わせると、「10個師団どころか、日本軍全体相当したのではないか・・・。」となるようですが、その点では、私も概ね、司馬史観に同意です。
あ、誤解のないように申し上げておきますと、無論、明石独りでロシアに勝てた・・・などとは露ほどにも思っていませんよ。
誰より、明石本人が思ってなかったのではないでしょうか?

即ち、日露戦争ほどの近代戦になってくれば、桶狭間織田信長今川義元を討ち取ったようなものとは、戦争自体の質が同じ戦争とは言えないほどにまるで違っており、つまり、近代国家における戦争とは、個人の能力の優劣で決まるものではなく、国家という大きな組織同士の「総合戦略」の優劣でこそ決まってくるものだと思うからです。
そして、先述しました日本側の6つの戦略というものこそが、それをよく体現していると思いますが、(ただ、このうちの殆どが、当初から成算があってのことではなかった・・・という点こそが、この戦争の勝利が如何に際どいものであったを現しているのでしょう。)一面で、これらは、それぞれがそれぞれで健闘しているうちに、有機的相乗効果を増していったが故の勝利であったと言え、即ち、どれか一つでも欠けてはならない勝利であったともいえるでしょう・・・。
具体的に言うならば、満州義軍の存在や明石の謀略工作が軍事的成功を助け、軍事的勝利が資金調達を容易にし、資金調達がまた軍事的成功に繋がり、それがアメリカ和平仲介意欲を高め、それがまた、「いけるぞ!」ということになって明石の革命工作も盛り上がる・・・といった具合に・・・。

明日に続きます。
                               平太独白
by heitaroh | 2006-04-19 08:27 | 歴史 | Trackback | Comments(4)
Commented by Sarhto at 2006-04-18 20:21
[玄関]・▽・)ノ おじゃまします♪
(*´▽`)ノ ・゚:*:゚★⊃`ノ八"`ノ八☆・゚:*:゚
脱力モードのSarhtoです。
今日も定型コメントでゴメンナサイですが
しっかり読ませて頂いてます☆
もちろんばっちり応援もさしていただきます~

応援ポチ凸~ c=(^▽^o)連打しまくりでw

Commented by へいたらう at 2006-04-18 20:39
>Sarhtoさん

ようこそ!
脱力モードには。。。。
タツンダ!! ジョ━━(o_ _)o━━(o―_―)o━━(9 ̄ー ̄)9━━━!!

いつも、こんなのにコメント頂きありがとう御座います!
Commented by タイガーパンツ at 2006-04-19 13:22
この話は九州のヤマ渓に行く途中の邪馬台国を自称する街辺りを走っている周辺でお聞きしましたね。うーん、いい話ですな~。
今、司馬遼太郎の「ロシアについて」読んでます。それが終わったらいよいよ「坂の上の雲」突入です。
Commented by へいたらう at 2006-04-19 21:06
>タイガーパンツさん

ヤマ渓ではなく、やばけい(耶馬渓)です(笑)。
ほら、ちゃんと入れれば、ちゃんと変換するでしょ・・・!
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱「財閥」の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

令和7年 19世紀ロンドンと東京。「描きたかったのは猟奇ではない。悲惨である」。「女王陛下の十手持ち」出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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