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トルコ建国の父、満点・アタチュルク!
親愛なるアッティクスへ

私はかつて、混乱極まりなかったエリツィン時代のロシアをして、こう言ったことがあります。
「ロシアはトルコに倣うべきである。大国の維持が難しくなったのであれば、それらの独立を阻むよりは、一旦、適正規模ロシア人の国、ロシアに生まれ変わるべきである。」と。
現在のプーチン政権には、必ずしもこの定義は当てはまらないかもしれませんが、独立派のテロなどの直接的なコストはもちろん、ウクライナなどを無理してつなぎ止めておこうとして、逆に向こうに追いやるなどの間接的なコストなどを考えると、あながち、今でも的はずれなことでもないように思えますが。

で、トルコと言えば、有数の親日国として有名ですが、では日本人がそれほどトルコを知っているかと言えば・・・ではないでしょうか。
そのトルコを語るとき、やはり、建国の父、ケマル・アタチュルク(ムスタファ・ケマル)の存在を抜きには語れないと思います。
ケマルというのは、「満点」という意味だそうで、軍学校時代、彼が毎回、数学のテストで100点ばかり取るので付いた通称だそうですが、トルコ民族存続はこの強烈な個性を持った一人の軍人の存在抜きには考えられなかったでしょう。
20世紀初頭、さしもの栄華を誇った、かつての大帝国「オスマン=トルコ」も欧米列強の前に蚕食されるに任せ、断末魔の状態であり、そこへ登場したのが軍人ケマルです。
(クルド人やギリシャ人、アルメニア人にとっては許せない人物でしょうが、こと、トルコ民族にとっては救世主だったであろうことは間違いないところだと思います。)

一方で、「ラスト・エンペラー」と呼ばれた人の多くが、自王朝の滅びるときは国民をも道連れにしたがるモノのようで、この点で、オスマン=トルコ最後の皇帝、メヘメト6世も決して例外ではなく、ケマルは皇帝の売国行為に敢然と戦いを挑みますが、イスラム世界の法王とも言うべき「カリフ」を兼ねていた皇帝の権力は強く、苦戦を強いられるも、戦いを重ねる中で徹底した政教分離を成し遂げていきます。
ただ、実はそれよりも、私が彼の業績の中で、本当に凄い!と思わず唸ったのは、トルコ帽廃止したことの方でした。

「一国の習慣を変えることは、その国の国境を変えるより難しい」と言われます。
丈の長いトルコ帽は如何せん、近代軍隊には不向きだったそうで、そこでケマルはこの帽子を廃止し、ヨーロッパ風の帽子に変えることを思い立ったそうですが、このことはトルコ人にとっては、単なるファッションの問題に留まらずイスラムの神を否定することにも等しかったようで、この制度への国民の反発は予想以上に激しかったそうです。
この、政権の存続さえ揺るがしかねない事態を憂慮したある将軍は、議会でこれを弁護したところ、ここでもケマルは政教分離の大原則を曲げることなく、この将軍を追放してしまい、さらに、軍隊を各地に送って、軍事法廷を開き、不服従を理由に処刑してまで、これを徹底したと言います。
事の是非はともかく、恐るべき辣腕!恐るべき気迫、恐るべき信念!というべきでしょうか・・・。
                           平太独白
by heitaroh | 2005-07-09 17:57 | 国際問題 | Trackback | Comments(6)
Commented by henry at 2005-07-27 22:29 x
TBありがとうございました。トルコがずっと親日国であってくれることを願っています。
Commented by mugi at 2005-07-27 22:44 x
初めまして、TBありがとうございました。

私の本棚に、「ケマル・パシャ伝 大島直政著 新潮選書」という本があります。
トルコ帽廃止の件では多数の亡命者が出たそうですが、彼は断行しました。やがて国民もキリスト教徒の帽子の方が便利なのを身を持って知るようになったとか。
強権的手法に批判はあるでしょうが、ケマルのような指導者がいなければ、トルコは滅亡していたでしょう。彼がもう少し長生きしておれば、と思います。
Commented by へいたらう at 2005-07-28 14:06 x
>henryさん

はじめまして。
コメント有り難うございました。
むしろ、百年前のことで未だに親近感を持ってくれていると言うことに驚きます。
代々、日本人はエライ奴らだ!って、言ってくれていたということでしょうから・・・。
Commented by へいたらう at 2005-07-28 14:17 x
>mugiさん

私の本棚には「灰色の狼 ムスタファ・ケマル 新生トルコの誕生 ブノアメシャン著 牟田口義郞訳 筑摩書房」というのがあります。
実は15年ほど前に読んだモノでしたので、すべてを覚えていたわけでもないのですが、このトルコ帽廃止の件は、当時、「本当にこんな事が可能なのか!?」と大変、驚いたことで、かなり、鮮明に記憶に残っておりました。
ある意味、オスマン=トルコにおけるケマル・アタチュルクは、まさしく、清朝における毛沢東のようなものではないでしょうか?
ああいう大帝国は王朝が滅んでも、底力としての、人材の厚みはありますから。
Commented by mugi at 2005-07-28 21:54 x
こんばんは、平太郎さん。
昨日のケマルについて、追加したい事があります。

トルコ帽は19世紀に出来たもので、案外新しい“ハイカラ”帽でした。
これがムスリムに敬遠された訳は、神学者たちが「キリスト教徒がつばやひさしのある帽子を被るのは神に対し後ろめたい事があるからだ」と説いていたから。別にコーランは、ひさしのある帽子を被ることを禁止してません。

トルコ帽廃止に対する民衆への処置は、憲兵隊と警官はこれを被っている者を発見次第、直ちに没収し、抵抗する者は留置所に入れました。が、この帽子に執着した者は処刑されたと書いているのは欧米作家の大嘘だ、と大島直政氏は言ってます。これは大いにありえるでしょう。19世紀末、インドでの弾圧と大飢饉は黙殺して、トルコをアルメニア人大虐殺者と糾弾したグラッドストーンがよい例です。精々、トルコ帽を被らないと誓うまで留置所暮らしか鞭打ち刑で済んだそうです。民衆も留置所よりマシ、との動機で西欧風の帽子を被るようなりました。

もちろん、ケマルが反逆者を多数処刑したのは事実です。が、歴代オスマントルコ皇帝は更に上をいく粛清を行ってるし、スターリンや毛沢東と比べても、まだ控えめな方でしょう。
Commented by へいたらう at 2005-07-29 15:03 x
>mugiさん

トルコ帽の件については、私が読んだ本にもそう書いてありましたので、知ってました。
ただ、出来る限り簡潔に・・・というのを心がけておりますので、その辺は簡単に書いたのですが、 ただ、処刑されたというのが大嘘だというのは知りませんでした。
私も何か、そんな感じしたんですよね。
少し、眉唾っぽいなと・・・。
私が読んだ本の作者も確か、フランス人じゃなかったでしょうか・・・。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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