ハンカチ王子こと、斎藤佑樹投手は、今、いろいろな人に、「僕はなぜプロで成功できなかったんでしょうか」と聞くようにしているそうですね。ネットでは、「コーチの指導や先輩からの助言を聞かなかった」とか、いろいろ、言われてるようですが、そんなのプロなら当たり前の話で、落合博満、野茂英雄、イチロー、今の大谷翔平くん然りで、むしろ、自己を貫いた人の方が大成しているわけで。
この点で思うのが、今のプロ野球選手に決定的に欠けている分野があります。
それが、「日本プロ野球史」というジャンルです。
(既に、変換さえしないという。)
「そんなもの学んだって、何の役にも立たん」と言われるかと思いますが、この点で、痛切に思うことがあります。
少し前のこと、たまたま見たテレビで「パームボール」についての特集を見たのですが、今、パームを投げる投手は二人しかいなくて、その二人も、コントロールしづらいという理由で、あまり、投げてないとのこと。
で、誰だったか忘れましたが、そのうち一人がゲストに出ていたのですが、録画コメントの最後に、「針の穴を通すコントロール」と呼ばれ、通算320勝をあげたレジェンド・小山正明翁(いやいや、未だに矍鑠としておられる)が出て、「僕の時は、ここで落ちる角度をコントロールしていた」と言ったら、現役投手が、なるほどという顔で、「へー」と言ったんですね。
ここで私が驚いたのは、小山さんの技術が今のプロ野球に継承されていないこと。
おそらく、小山さんに限ったことではなく、先人の技術がどこかの時点で断絶しているんですね。
さすがに、小山さんの現役時代は私も殆ど記憶には無いのですが、それでも、現役引退後は投手コーチとして、多くの投手を育てたはず・・・。
これは偏に、今の選手が参考にするのは、映像にしろ、自分が見たことがある選手に限られているという事で、文献や映像などから学ぶことをしていないはず。
おそらく、今の若い選手はイチローが言うことなら、喜んで耳を傾けるでしょうが、もう、野茂英雄も知らないのでは。
ただ、これは私もわかるんですよ。
私が若い頃は、テレビのプロ野球歴代ベストナイン選出番組には、戦前の選手など入ってましたから。
「そんなのいらんよ」と思ってましたよ。
であれば、今の選手に過去の名選手を研究しろと言っても、歴史の勉強をするようなもので、居眠りするだけ。
この点で言えば、各球団もいささか無策すぎるんですよ。
寮のリビングなどには、24時間、過去の名選手の映像を流すようにしておけば、そこはプロですから、たまたま、通りかかって、目に留まったら、「ん?今のは何だ?」くらいにはなるのでは。
ちなみに、かつて、智将・三原脩監督は、選手に「本を読みなさい」と言ったそうですが、小久保裕紀選手は本を読んでいると、「目が悪くなるから、読むなら現役を引退してから読んだら」と言われたとか。でも、今は、どうせ、スマホでゲームしてるんでしょうから、もう、そのロジックは通用しませんよね。
であれば、もう一伸びに苦しんでいる選手、クビになるかもと危機感を持っている選手は、スマホゲームなんかしてないで、過去の名選手について書かれた本を読むべきでしょう。
八幡太郎源義家は凱旋帰国した際に、出迎えた公家から「好漢惜しむらくは兵法を知らず」と言われ、人々が公家の言葉に失笑冷笑する中、独り、教えを受けたといいます。
なかなか、一軍に定着できない選手、10勝の壁を超えられない投手などは、こういうのが、飛躍のきっかけになるかもしれないわけで。
ちなみに、栗山英樹監督は三原脩翁に師事しているそうで、毎度、新しい仕事に臨む前に、三原ノートをコピーして持って行くそうですが、その時々、与えられた役割によって、線を引く箇所が違うそうですね。
なるほど、国内リーグの監督と、WBCの監督では、「同じ監督」と言えないくらいに違う・・・と。
平太独白