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平成大河ドラマ「徳川慶喜」に見る雑多な種類の人間のカオス
私にとっての大河ドラマのベスト3と言えば、昭和の「花神」、平成の「徳川慶喜」、令和の「鎌倉殿の十三人」・・・だとは、かねてより、申し述べていたことですが、先日、思い立って、モッくん(本木雅弘)の徳川慶喜のDVDを購入しました。
なぜ、ベスト3と言っておきながら、今まで購入してなかったかというと、DVDは総集編だからでして・・・。
放送当時、VHSビデオに全編録画したのですが、さすがに、今となっては・・・。
ということで、この際、総集編でも仕方ないかと。
平成大河ドラマ「徳川慶喜」に見る雑多な種類の人間のカオス_e0027240_18453828.jpg
(↑徳川慶喜墓所。)

というほどに、この作品は、全編見てこその作品なんですよ。
(他二つにも同じことは言えますが。徳川慶喜については特に。
中でも、禁門の変で奮戦する慶喜が負傷するシーンは、一番の見せ場のはずなんですが、なぜか、総集編ではカットされているという・・・。他にカットする所あっただろうにと。)
なぜかと言えば、この作品は慶喜と大名や公家など、歴史上の有名人が絡むのではなく、江戸の町にいたであろう架空の庶民をも生き生きと描き出していたからです。

平成大河ドラマ「徳川慶喜」に見る雑多な種類の人間のカオス_e0027240_18425032.jpg
よく、「江戸」にノスタルジーを感じると言う方がいらっしゃいますが、当時の江戸は、一言で言うと、雑多な人間の寄せ集め。
牧歌的な都市をイメージしていると大間違いで、これをもっとも、相応しい言葉で表すなら、一言、「カオス(混沌)」です。
カオスとは、言うまでもなく、無秩序で、さまざまな要素が入り乱れ、ちゃごちゃした状況」で、その意味では、むしろ、古代ローマに近かったでしょう。
共和制ローマを見て、今のアメリカやイギリスと同じに考えるのは大間違いで、この点は、以前、古代ローマの特殊性をドラマ「ROME」にみる1 治安編 に書いた通りです。
もっとも、江戸の場合、さすがに、古代ローマのように、それぞれの民族衣装に身を包んだ異民族は住んでませんが、それでも、時代劇に出てくる、小ぎれいな服着た町娘が闊歩する世界とは程遠い。
(おそらく、真冬でも服を着てない人もたくさんいたでしょう。)

当時の江戸の治安は時代劇に出てくるように、与力、同心、岡っ引きらによって守られていたと思ったら大間違いで、まず、彼らの収入は幕府からの給与は形だけで、庶民からの袖の下で潤っていたわけで・・・。
(与力同心には他に拝領屋敷の一部を人に貸すという不動産収入もあったようですが。)
さらに、世情を知らぬ幕閣のお偉いさんたちの思い付きか、「裏社会の人間に捜査を任せれば、蛇の道は蛇で効果的だろう」ということで、岡っ引きには裏社会の人間を任命。
となれば、彼らは何も面倒くさい犯罪捜査などする必要もなく、普通に歩いているだけの人たちを片端から逮捕、死刑台に送り込んだと。

そこへ、参勤交代で全国から集まってきた威張り返った武士に、旗本、ゴロツキに犯罪者・・・、それらが、みんな、普通に人斬り包丁持って、悪酔いする安い酒を飲んでいるわけで、となれば、「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるのも当然の事態が起こります。
さらに、DV、レイプ、誘拐、詐欺、泥棒は当たり前。
それどころか、悪意は無くても、人が多すぎて、ちょっと目を離しただけが一生の生き別れになる。
さらにさらに、当時の死因の第一位は梅毒だと言われていますから、皮膚が溶けて骨が露出した者や、脳が冒されて発狂した者、それに加えて、不衛生な住環境からくる結核などの病気を患っている者数多。
とても、タイムスリップして、「また行きたい」とは思わないでしょう。

平成大河ドラマ「徳川慶喜」に見る雑多な種類の人間のカオス_e0027240_12191315.jpg

で、この徳川慶喜にも、江戸の町火消し新門辰五郎の一家(本人は実在でも、妻子のキャラは架空でしょう。)に、藤岡琢也演じる自称浪人。
(後半で、居酒屋で若い侍と喧嘩になり、「元高槻藩士・中山五郎左衛門」と名乗ったら、相手が突然、「父上、太郎でございます」と、心憎いばかりのまさかの展開でした(笑)。)
また、いい年こいて、嫁にも行かず、家業の手伝いもせず、三味線ばかり弾いている娘。
(後半で、オルガンという物を知り、オルガン習いたさのあまり、西洋人の家のメイドになり、オルガン修行を許されるや、「この子は天才だ」と。音楽が好きで好きでたまらないけど、許されなかった時代。最後は、オルガニストとなり、洋装で「パパ!ママ!」と実家に乗り込んできて、親はパニックになる(笑)。)
・・・、etc。
青森出身の映画監督・川島雄三は「大阪にはいろんな種類の人間がいる。青森には地主と小作人の二種類しかいない」と言いましたが、当時の江戸にも、とにかく、いろんな人間が物凄い密度でいたんでしょうね。

ちなみに、慶喜は家臣が「申し上げます!」とか言ってきても、「何だ」とか「どうした」なんて言わないんですね。
じっと黙っている。
最初から、『「どうした?」くらい聞いてくださいよ』などと言われる環境に育ってないんですね。
また、慶喜が入室してきて、敷居でつま先を打つ(だいぶ、わざとらしかったですが(笑)。)シーンがあったんですが、痛いのを我慢する慶喜に、必死で笑いをかみ殺す重臣たち。
当然、こんな演出部分は総集編ではすべてカットされてました。
                    平太独白

by heitaroh | 2023-06-08 07:39 | 文学芸術 | Trackback | Comments(2)
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-06-23 15:35
たしかにモックンの慶喜は良かったですねぇ。
わたしもDVDほしいです。
出来れば全編のやつ。
ここ15年ぐらい前からは、全編録画分をDVDで残してるんですけどねぇ。
BSの大河ドラマアンコールでやってくれないかなぁと期待しているのですが、出演者がのちに問題起こしたりして放送できない作品もたくさんあるじゃないですか!
モックンの慶喜、そういう人いませんでしたっけ?
(鎌倉殿も文覚役で猿之助が出てましたから、当分、再放送できなくなっちゃいましたね)

モックンの慶喜で強いて不満をいえば、無血開城が最終回で明治を描かなかったことですかね。
なので、一昨年の青天を衝けで、明治の慶喜が描かれたことは嬉しかったですね。
Commented by heitaroh at 2023-06-26 14:57
> sakanoueno-kumoさん
問題起こした人・・・、誰かいましたかね?
まあ、当時は今ほどセクハラ、パワハラがうるさくなかったですからね。

<モックンの慶喜で強いて不満をいえば、無血開城が最終回で明治を描かなかったことですかね。

おっと。
大河ドラマにはネガティブなことを思わないんじゃなかったですか(笑)。
(だいぶ、苦労しておられるようですね(笑)。)

と言いつつ、私も「ここで終わりかあ」とは思いましたね。
でも、まあ、慶喜の明治以降の人生は付け足しですから。仕方ないっちゃ仕方なかったのかなと。

ちなみに、私の中のベスト・オブ・慶喜は小泉孝太郎くんでした(笑)。
本物の貴公子なんだもん。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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