サミットでの主要議題の一つ、ウクライナ戦争。
プーチンは開戦後の芳しくない戦況を思えば、その心労はひとかたならぬものがあるはずで、見るたび、「爺ちゃんになったなあ」と思わされます。
実際、ロシア人としては既に高齢であることを思えば、いつ、何があってもおかしくない、もっとはっきり言えば、そう長くないのでは。
で、プーチンが死んだら戦争が終わると思っている人が多いようですが、果たして、そうでしょうか?
ロシアという国には、欧米のような明確な後継者選出システムは無いと言われています。
(その意味では、一番近いのは日本でしょうか。小渕恵三総理(当時)が急逝したときも、「密室で決めた」などと言われ、その後も、そう言った場合の明確な制度が定められたようには聞かないのですが。)
実際、ソ連崩壊後、ロシアの権力移譲は、メドベージェフをカウントに加えなければ、エリツィンからプーチンへの一回しかあっておらず、次がどういう形になるかは、未知数です。
したがって、今、プーチンが死ねば、内乱になる可能性もあります。
ただ、実際にはすぐにはそういうことにはならないと思います。 まず、その、プーチンが選ばれた基準は、「我々の権益を守ってくれそうだ」だったと。
まあ、実際にはエリツィンとしては、自分と家族の生命財産を確実に守ってくれる人であれば、誰でも良かったのでしょう。
が、おそらく、今は、プーチンも同じ気持ちでしょう。
しかし、「確実に、あなたとご家族の生命に危害を加えることはありません」と言っておいて、裏切る可能性もあるわけで、プーチンとしては、自分の体がもつ間は誰にも譲りたくない。
(エリツィンも同じ気持ちだったかと。いよいよ、ダメだとなって、恐る恐る渡したというのが本当のところだったかと。)
では、プーチンが死んだらどうなるか。 エリツィンのときのように、まだ、本人に意識があるうちなら、もっとも確実に自分たちを守ってくれる者を選び、渋々、彼に権限を与えるでしょう。
その点で、まずパッと浮かぶのは、大統領時代もプーチンに忠実だったメドベージェフでしょう。
ただ、プーチンの場合、エリツィンと違い、自らの出身母体「FSB(秘密警察)」の人間にこそ、もっとも、信を置いているでしょうから、あるいは、そこから誰かを抜擢するかもしれません。
ちなみに、もし、意識が無かったら・・・ですが、その場合も、おそらく、側近たちが「意識がある」ことにして、自分たちに都合がいい誰かを選ぶでしょう。
(ロシアに限らず、小渕恵三元総理に限らず、13代将軍徳川家定のときの井伊直弼然りで、周辺にいる者なら誰もが当然、考えることかと。)
で、とりあえずは混乱は回避されると思います。
新大統領に納得しない人たちもいるかと思いますが、その場合も、しばらくは「お手並み拝見」で様子見になるでしょう。
新大統領としては、ウクライナ戦争の講和の機会を探ることになるでしょうが、その場合、安易な譲歩は避けなければなりません。
それでなくとも、既に、少なからぬ戦死者も出ているのですから、占領地から撤退して、賠償金払って、ごめんなさいしたなんてことになれば、国内から「弱腰批判」が噴出、下手をすれば失脚、自らの生命さえ危険になります。
(日露戦争のポーツマス講和の際、ロシア皇帝は連戦連敗の軍事行動と、日本の明石元二郎による革命派支援工作により、窮地に追い込まれており、そこで弱腰姿勢を見せれば、一気に国内の反政府派が活気づく恐れがあり、逆に譲歩できなかったと。もっとも、勝っていたら勝っていたで譲歩しなかったでしょうが。)
この戦争の終結については、以前から申し上げているとおり、ひとえに、アメリカ大統領選挙次第です。
が、そのときに、ロシアの政権がどうなっているかも注目する必要があります。
以下は、オーランドー・ファイジズ著「クリミア戦争(下)」の一文。
戦役中のロシア皇帝死去の報を聞いたとき、「誰もがこれで戦争は英国の勝利のうちに間もなく終わるだろうと確信した。侵略政策を強行して世界を戦争に引きずり込んだニコライ一世がこの世から姿を消した以上、ロシアもついに正気に戻り、早期講和を求めるに違いない」
ロシアのセヴァストポリ要塞攻略後、「軍事的な観点から言えば、セヴァストポリが陥落したとしても、それはロシアの全面的敗北からは程遠い話だった。ロシアを屈服させるには大規模な陸上作戦によってモスクワを占領するか、あるいはバルト海海戦に勝利してサンクトペテルブルクを落とす必要があった。セヴァストポリが陥落すればロシア皇帝は講和を求めざるを得ないだろうと考えていた西側の指導者がいたとしたら、彼らはすぐに期待を裏切られた」と。
平太独白