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渋沢敬三に見る田中角栄が喝破した頭が良いの定義
平岡円四郎という人がいます。
最後の将軍・徳川慶喜の腹心で、あの、渋沢栄一をスカウトした人ですが、栄一曰く、「余りに前途が見え過ぎて、とかく他人のさき回りばかりを為すことになるから、自然、他人に嫌われ、非業の最期を遂げた」と。
これを具体的に言うと、同じく栄一の、水戸天狗党の乱の首謀者として、非業の死を遂げた藤田小四郎(慶喜の父、斉昭の腹心・藤田東湖の子)評があります。
「私より問を発せぬうちに、早や私が聞こうとしておった条項を察知し、チャンと先廻りをして一々並べ挙げ、しかじかと詳細に説明弁解した」と。
小栗上野介、江藤新平然り、切れすぎるがゆえの非業の死。

渋沢敬三に見る田中角栄が喝破した頭が良いの定義_e0027240_13031810.jpg
ただ、これは、私にはわかるんですよ。
と言っても、私の頭脳が彼ら並みに鋭敏ということではなく、むしろその逆。
こういうときには、いつも、「俺のような性格の者が、その場で気が付いて、一々、糾弾していたら、とっくに刺されているよ」と思うようにしています。

ところで、「頭が良い」とは何か?
この点を、田中角栄は「頭の良さとは記憶力である」と喝破しました。
が、それだと、こういう「その場で気付かない」ことが説明できないんですね。
私も記憶していないわけではないんですよ。
ただ、目の前で起こっている事態と、その記憶を関連付ける神経が不足しているんですね。

渋沢敬三に見る田中角栄が喝破した頭が良いの定義_e0027240_13015401.jpg
(↑渋沢敬三邸宅跡。)

この点で、栄一の孫・渋沢敬三にはまた別の話があります。
終戦直後、不当な小学校取り壊し命令を受けた校長が相談に来た際、その場で、行政に説明会開催を要求すると同時に、保護者会を開き、保護者側の意思の統一を確認するように指示。
その上で、「とにかく僕に任せなさい。ムシロ旗立てて反対運動などするんじゃないよ」と。
これも、当たり前のように見えて実は周到な判断で、保護者側の意思も統一しておかねばならないんですね。
それを怠ると、説明会で訳もなく激高する人が出てきて、保護者側に温度差が生じ、相手に乗ぜられてしまう。
で、当日、特に激高する人もなく、説明会は淡々と終了。
すると、敬三は直後に、「学校にある地域財産をすべて書き出せ」と指示。
学校は公立でも、プールやピアノなどは地域が金を出した物だったそうで、これに、「行政は勝手に処分できない」という意見を添えて、当時、泣く子も黙る存在だった占領軍GHQに提出。
結果、取り壊しの話は立ち消えになったと。
これも、「何だ。結局、GHQ人脈を利用しただけじゃないか。だったら、面倒くさいことしなくても・・・」と思われそうですが、これは、たとえ、絶対権力のGHQであっても、結局、やっているのは人ですから、大義名分・・・、すなわち、GHQが受け入れやすい形にして持って行ったほうが、向こうも受け入れやすいんですね。
その上で、人脈というものが生きてくるわけで。

打つ手打つ手がすべて的確で、かつ、見落としがない。
ここにも、敬三の祖父譲りの「頭の良さ」が見えてくるでしょうか。
            平太独白

by heitaroh | 2022-02-01 12:45 | 経済・マネジメント | Trackback | Comments(2)
Commented by sakanoueno-kumo at 2022-02-02 18:06
よく言われるIQとEQの違いってやつでしょうか?
つまるところ、平岡円四郎や小栗や江藤は、IQは高かっただろうけどEQは高くなかった。
渋沢敬三はIQもEQも高かったってことでしょうかね。
Commented by heitaroh at 2022-02-02 18:51
> sakanoueno-kumoさん
IQにEQですか。
ITとETが精いっぱいの爺にはもう、ついて行けそうにありません(笑)。
いずれにせよ、どちらも無い人間には無縁の世界です。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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