もっとも、念頭にあったのは、昨年(?)の大河ドラマ「麒麟が来る」よりも、昭和の「国盗り物語」での光秀ですが。
朴正煕に限らず、今の、プーチンや習近平といった人は、たとえ、手段として間違ってなかったとしても、最初にやり過ぎたがゆえに、今度はやめようにやめられなくなる。辞めてただの人になってしまえば、報復を受けかねないから。
「勇者は一夜にして臆病者になる」。
私はこれを「スターリンの呪縛」と呼んでいます。
(唯一の例外はエリツィンかと。もっとも、彼も病気になってなければ、果たして、権力を手放したかどうか。)
あれほどに勇敢に権力を掴み取った人が、権力を失おうとするときには、別人のように醜態をさらす。
映画の中でも、どこまで史実なのかは知りませんが、革命のとき、暗夜に進軍する朴正煕一行の前に憲兵隊がいて、ピューと銃弾が掠めたと。
うちの祖父も言ってましたけど、夜戦というのは本当に恐いそうですね。
どこから、弾丸が飛んでくるかわからないから。
で、どうする?と朴正煕に聞かれた主人公は、「男の行く道は笑い顔ばかりでしょうか?」と返答、朴正煕はそのまま進軍を続けたと。
嘘か本当か知りませんが、このセリフには、ちょっと、単細胞としては、グッときましたよ。
ミュンヘン一揆のときのヒトラーを想起します。
そういう意味では、信長にしても、朴正煕にしても、彼らでなければ誰も出来ないようなことをしたし、彼らが出たことで救われた人も多かったんだろうけど、やっぱ殺されるしか終わりはなかったんだろうなぁと。
もっとも、プーチンが朴正煕と違うところは、ロシアは大国で韓国は小国ということ、平たく言えば、アメリカの意向に縛られないということですね。
さておき、で、思ったのが、この映画、なぜ、このタイミングなのかな・・・ということ。 日本で、「麒麟が来る」がコロナの関係で今年にずれこんだこと・・・というよりも、朴正煕大統領の娘、朴槿恵前大統領に懲役二十年の判決が下ったばかりのタイミング・・・ということですね。
朴槿恵という人は、日本人から見ていると、ダメな大統領ではあったけど、そんなに悪いことしたの?という感じではあるんですよ。
ただ、韓国での評判は悪いみたいですが、それでも、殺人犯でも初犯は懲役十年ですから、懲役二十年はちょっとびっくりです。
あの判決は、おそらく、検察改革を進めようとする現政権に対する毒饅頭でしょうが、本当に法治国家なの?という気が。
映画自体は、冒頭に「フィクション」と断りを入れているくらいだから、かなり、暗殺者側の視点に立ち、元大統領を貶めている印象。 まあ、実際に人間なんて、きれいごとばかりではないでしょうから、そういうこともあったのだろうけど、朴父娘に同情する世論を抑えようとしているような。
で、最後に「麒麟が来る」について。
徳川家康は信長様は危険だと言ってたし、実際にそうだったのでしょうが、ただ、信長の家康に対する信用は異常なくらいなんですよ。
割と岐阜周辺を気軽に行き来しているのですが、なかには、吉良まで鷹狩りに出かけたりしてます。
吉良は同盟者とはいえ、家康領ですからね。
さらに、武田討伐後、帰還する際には浜松に宿泊するのですが、このときも、近衛兵は全員先に返し、弓鉄砲隊だけにして、のんびり帰ってます。
信用というより盲信、まるで、家康を試しているかのような。
家康はともかく、よくそれで家臣らが暴発しなかったなと。
誰か一人くらい、明治の大津事件のようなことを起こしてもよさそうに思うのですが、家康の統率力恐るべしでしょうか。
平太独白