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備中高松城水攻めにみる心理的効果が黒田官兵衛の特徴
豊臣秀吉がまだ織田家の部将であった頃、三木の干殺し鳥取の飢殺し高松城の水攻めで中国地方を席巻したと言われてますよね。
特に有名なのが城の周囲に延々と土堤を築き、川の水を引き込んで水没させて落とした備中高松城ですが、私がかねてより疑問だったのが、なぜ、ここだけ水攻めだったのか・・・ということでした。
もちろん、他の2つと違い、水を貯めやすい地形だったということはあるのでしょうが、でも、他の2つは普通に兵糧攻めで落ちてるわけですから、別に水没させなくても落とせたんじゃないの?・・・と。
で、さらに疑問なのが、秀吉方は救援に来た毛利軍の猛将・吉川元春の軍と土堤との間にはわずかな部隊しか配置していないことで、これでは、毛利軍がその気になれば夜間にでも急襲をかけて土堤を破壊し、城を水没から救うことは出来たんじゃないの・・・と。

備中高松城水攻めにみる心理的効果が黒田官兵衛の特徴_e0027240_1044137.jpg
(↑左側に少しだけ写っている緑地が吉川陣。土堤との間には花房、山内の部隊しかいないことがわかると思います。)

ここまで考えて、ハッとしました。
つまり、「ここがどういう場所か?」ではなく、「今がどういう時期か?」だったのではないかと。
戦闘は梅雨から初夏にかけて行われたそうですから、織田家と違い、兵農分離が進んでいない毛利兵は農繁期の出兵を嫌ったのではないか・・・と。
兵からすれば、「だったら、来年の年貢は負けてもらえるんですか?」と言ったとしても、言われた側は現代もそうであるように税収不足は困るわけで、「いや、それはそれで・・・」としか言えず、だったら「冗談じゃない」となった・・・と。
となれば、救援に来た毛利軍は実際には大した兵力を確保できておらず、さらに、いくら、「もうすぐ終わるから」と言ったところで、目の前でしっかり水に浸かっている城を見れば長引くというのは明らかで、そうなると今いる兵を引き留めるのも難しくなっていたのではないか・・・と。

備中高松城水攻めにみる心理的効果が黒田官兵衛の特徴_e0027240_1046973.jpg
(↑昭和期の大雨時の写真。中央で天橋立のようになっているのが高松城址。)

結果、少ない兵力で土堤に向かって出動すれば「待ってました」とばかり秀吉軍の主力部隊に捕捉され、全滅してしまう可能性があり、また、秀吉もそれを狙っていた・・・と。
そういう目で見れば、高松城は周辺の泥沼で防御するという「時代遅れの城」で秀吉軍なら水攻めでなくてもどうにでもなった・・・と。
つまりは、織田家の革新兵制「兵農分離」も含めた戦争形態の変化が勝利の背景にあったと言えるでしょうか。

ちなみに、この攻略法を献策したのは秀吉の参謀として頭角を現していた黒田官兵衛(如水)だったという説もありますが、これは私もそう思います。
なぜなら、作戦計画という物には人それぞれの傾向というものがあるもので、官兵衛のそれは、後の小田原攻囲の時などでもそうですが、単に物理的に攻略を企図するのではなく、目に見える形での心理的効果を狙うというのが一つの特徴のように思えるからです。
つまり、水攻めは攻略の手段ではなく、敵兵に与える心理的効果を狙った象徴的な物だったと。
                                         平太独白

by heitaroh | 2013-11-07 17:44 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by sakanoueno-kumo at 2021-04-22 16:07
わたしも、立案者は官兵衛だったんじゃないかと思いますが、ただ、並の大将なら、そんな突拍子もない奇策を採用することはなかったでしょうね。
そんな大掛かりな土木工事を短期間でできる訳がない、と、ほとんどの人が思ったでしょうし、もしできたとしても、上手くいく保証はどこにもない。
リスクが大きすぎるし金がかかりすぎる。
秀吉は、この土木工事でたいそう散財したといいますしね。
普通なら、そう言って一蹴されるところだったでしょうが、それを採用して実行に移し、そして実現してしまうのが秀吉のスゴイところなんだろうと思います。
秀吉が天才だとすれば、そんな並外れた実行力なのかな、と。
Commented by heitaroh at 2021-04-22 18:28
> sakanoueno-kumoさん
もし、そうなら、官兵衛ほどの人なら、何かを添えるか、もしくは受け入れられやすい形に変えるかにして提案したと思いますよ。
「最終的には採算がとれる」と。
かつて、黒澤明は七人の侍を撮るときに、予算が膨大な額になることがわかっていたから、敢えてクライマックスのシーンを撮らず、重役連から「コストが高額になり過ぎている!」の声が出たところで、撮れている部分を見せたら、「これだけ使っておいて、ここで打ち切りというわけにもいかんだろう」ということになったという話があります。
秀吉としても、実績を上げ続けなければパージされるというプレッシャーは感じていたはずで。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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