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唯一の福岡市出身総理大臣・広田弘毅の功罪
親愛なるアッティクスへ

福田康夫さん、次の選挙には出ないそうですね。
先代もそうでしたが、淡々とした見事な引き際だと思います。
総理としては、少し真面目過ぎるあまり、迷走していた感がありますが、小泉さんと野田さんの間の短命政権の中ではマシな方だったのではないでしょうか。
この人にはもう少し、落ち着いた環境で政治をさせてあげたかったという気がしますね。
ところで、福田さんが総理になったことで、群馬県は総理大臣四人となり、東京、岩手を引き離して輩出県第二位に躍り出ましたね。
もっとも、一位である山口県菅直人さん(選挙区は別)まで入れると9人・・・でダントツなんでしょうが、対して、隣県である我が福岡県は2人で、かつ、合わせて任期2年・・・。
(この点は、以前、平太郎独白録: 自民党次期総裁候補に見る総理大臣論 その1。の中でも触れたところですが、「福岡県からの総理」というのは、どうにも、あと一歩・・・届かないんですよねえ。)

そのうちの一人は言うまでもなく麻生太郎さんですが、福岡市出身の総理大臣となると戦前の広田弘毅だけです。
この方は、城山三郎の小説、「落日燃ゆ」の主人公として知られている人で、彼を知る古老らは口々に、「大変、立派な人だった」・・・と言っておられましたが、実際、そうなんでしょう、立派な人格者だったと思います。
ただ、2.26事件の直後に総理になって、軍に翻弄されて1年で政権を放り出したのに、最後は、東京裁判文官として、唯一の絞首刑になったという運の悪さ・・・。
確かに、往時の状況の厳しさはその場にいない人間に口を挟む権利を与えるものではないでしょうが、敢えて言わせていただくと・・・、「所詮、喧嘩したことがない人だな」と。
あそこが唯一の戦争回避のポイントだったと思えるだけに・・・です。

私が言うポイントとは、内閣成立から間もない時期に軍部大臣現役武官制復活を許したことです。
(陸軍大臣は現役の軍人の中から選ばなければならず、登用の範囲は狭まり、陸軍の発言力は高まる。)
当時、2.26事件の直後で、陸軍に対しては批判的な空気がある中、組閣の段階で陸軍の横槍で吉田茂を始めとする登用を断念しており、それに続く「軍部大臣現役武官制復活要求」だったわけで、組閣人事への横槍までは我慢しても、ここで廣田総理がブチ切れて、ちゃぶ台返ししておけば、世論も支持したと思われ、そうすれば、猫の首に鈴を付けることも可能だったのではないか・・・と。
もちろん、それほど簡単にはいかなかったでしょうが少なくとも、どうせ、1年で政権を投げ出すのであれば・・・と。
(結果論ですが、後に、組閣の大命が降下した陸軍の天敵・宇垣一成内閣成立も有り得ただけに・・・。)
東京裁判での尋問記録を紐解く限りでは、彼には、軍部大臣現役武官制というものの危険性に対しては、あまり、認識を持っていなかったように思えますが、この点は、首を傾げさせられるところです。
なぜなら、軍部大臣現役武官制については、「復活」と記したとおり、元々、大正時代に「弊害が大きい」という理由から、一旦、「廃止」された経緯があったものだからです。

ちなみに、東京裁判における広田は、「私には責任がある。どのような判決でも受け入れる用意がある」と語っていたといいますが、この点は、ニュールンベルク裁判におけるシュペーアに相当するでしょうか。
日本でも、ドイツでも、戦犯として裁かれる者の中にも、一人くらいは、良識を持つ者がいる・・・ということかと。
平太独白
by heitaroh | 2012-09-27 06:52 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by 短時間睡眠法に挑戦中 at 2013-04-30 22:25 x
そうか、もう君はいないのか。を読んで以来、城山三郎氏の本を読むようになり、「落日燃ゆ」も読みました。城山三郎氏の著作は、「男子の本懐」や「官僚たちの夏」など傑作が多いですが、この作品は代表作と感じるほど面白かったです。
Commented by heitaroh at 2013-05-02 11:47
< 短時間睡眠法に挑戦中 さん

そうですね。城山三郎の代表作といっても過言ではないのではないでしょうか。
ただ、廣田弘毅に関しては、この一冊以外、あまり語られていないのが問題で、もう少し、違う見方をする物が無いとイメージが固定してしまうような気がします。
ちなみに、私は、城山三郎の小説では、雄気堂々、ビッグボーイの生涯―五島昇その人などが印象に残っておりますが、もっとも印象的だったのは、粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯でしょうか。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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