親愛なるアッティクスへ
昨日、レンジャーズへ移籍したダルビッシュ有投手が札幌ドームのファンの前でメジャー移籍の理由を語ってましたよね。
曰く、「野球選手として相手を倒すのが仕事だが、最近は試合前から相手に“このカードで投げないでくれ”とか“絶対に打てないよ”と言われるようになった。冗談と聞いていても、これではフェアな挑戦ができなくなる」・・・と。
まずもって、これくらい日本プロ野球の地盤沈下を改めて如実に示した言葉を聞くと、無性に腹立たしくなって来ますが、一方で、ダルビッシュ投手の気持ちも私には何となくわかるような気がします。
まず、かつて、現役時代の長嶋茂雄選手が「今日の江夏はとても打てないな・・・」とベンチで呟いたとき、当時の川上哲治監督はこれを聞いて、「おまえには江夏の球を打つだけの給料を払っているはずだ!」と言って、他の選手の面前で激怒したと言いますが、現在の監督さんたちも、たとえ、冗談でも選手たちにそういうことを言わせてはいけませんよ。
この点では、最近の選手たちは、労働組合などの発足もあって、妙に他球団の選手とも仲良しになっているんじゃないかと思える嫌いがあるですよね。
(一番、腹が立つのが、以前から指摘していることですが、オールスターで負けても選手たちが悔しがらないことです。)
また、ダルビッシュは、「僕は凄く勝負がしたかった。その上で相手が打ってやるという気持ちできて初めて勝負が成り立つ。それがなくなってきて、僕の中でモチベーションを保つのが難しかった」・・・とも言ってましたが、これなどは、思わず、かつて、阪神の村山 実投手が巨人の長嶋茂雄選手を、同じく、江夏 豊投手が王 貞治選手を打ちとることに異常なこだわりを見せ、長嶋・王もこれに負けじとこれを打ち崩して行った・・・という姿を思い起こしました。
星 飛雄馬に花形 満じゃないですが、「あしたのジョー」でライバル・力石 徹が亡くなった後、矢吹 丈が思いっきり、テンプルにパンチを叩きこめなくなったようなものだったでしょうか。
ジョーにベネズエラの華麗なる野獣、カーロス・リベラが必要だったように、ダルビッシュには遠慮なく殴り合える相手が日本にはもういなくなった・・・ということだったのかもしれませんね。
「お嬢さんにはおわかり戴けねえことでしょうが、言ってみりゃあ、つまんねえ
男の意地ってやつですよ」・・・とは、過酷な減量に耐えかねた力石徹が、
葉子お嬢様から渡された白湯を床に捨て、「どうして、そこまでしなくてはならないの?」と言われた時に言うセリフです。
今の時代、昭和の頃には割と普通に街角に転がっていた男と男の意地のぶつかり合いのような物を期待するのは、無茶無謀なことなんでしょうかねえ・・・。
「ダルビッシュよ、おまえにはもう、日本は少し狭くなりすぎた」
平太独白