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坂の上の雲に改めて思った大山巌元帥の魅力 後編
親愛なるアッティクスへ

先日の続きです。

NHKドラマ「坂の上の雲」では、騎兵の偵察報告を軽んじ、結果、ロシア軍の大攻勢の前に慌てふためく参謀本部の中に乃木希典第三軍司令官が入ってきたことで、児玉源太郎総参謀長が落ち着きを取り戻し、これを守りきった・・・という設定になっていましたよね。
どうしてこういう設定になったのかわかりませんが、私の理解では、慌てふためく参謀本部の中に大山 巌総司令官がぬーっと入ってきて、「児玉さあ、今日は朝から大砲の音がうるさいみたいでごわすが、いくさでごわすか?」と聞いた・・・というふうに覚えておりました。

坂の上の雲に改めて思った大山巌元帥の魅力 後編_e0027240_12473151.jpg「いくさでごわすか?」も何も、全滅するかもしれないような大攻勢を受けている時に、「知らんかったんかい!」と全員が思わず突っ込みを入れたくなるような問いに、参謀本部の面々は一瞬、すべて動きが止まった・・・と(笑)。
一瞬の静けさの後、どこからともなく笑い声が起き、参謀本部は落ち着きを取り戻した・・・と。
(←大山の遺品が眠る陸上自衛隊宇都宮駐屯地。公開されてます。)
こうなると神算鬼謀の児玉総参謀長、たちまちのうちに的確な手を打ち、撃退に成功・・・と。

特に、特筆すべきは苦戦に陥っている部隊に参謀を派遣したことだそうで、苦戦中の部隊は、援軍が無いと、自分たちは見捨てられたと思い、一気に全滅が早まるらしく、そこへ謀肩章をつけた参謀が駆けつけることで、崩れかけようとしていた部隊が踏みとどまることができた・・と。

大山 巌という人は、弥助と呼ばれた若き薩摩藩士時代は決して茫洋の人などではなく、過激派として文久2年(1862年)の寺田屋事件に連座し謹慎処分、鳥羽伏見の戦いでは負傷しながらも奮戦し、その他、薩英戦争以降、すべての日本の戦争に従軍したほどの猛者であり、その一方で、早くから砲術を学び、大山の設計した砲は「弥助砲」と称されるなど、ただの乱暴者とは違う一面をも持っていたようですが、維新後の明治2年(1869年)、渡欧留学した際には、すべて日本語、それも薩摩弁で通したらしく、宿のマダムがとても困惑した・・・という逸話も残しています。

従って、無論、大山総司令官も本当に現状がわかっていなかったわけではなく、本当は別室で独り、焦慮の極みにあったと思われ、ジリジリしていたのだろうと思いますが、この点は思わず、従兄の西郷隆盛西南戦争での敗走中に、夜間に断崖を登り疲労困憊している自軍兵士に向かい、「夜這いのごたる」とつぶやいたことで、思わず皆、吹き出して、この苦境を乗り切ることができた・・・という話を思い出しました。
薩摩隼人の面目躍如というところでしょうね。

大山 巌という人は「勝ち戦の間は児玉さんにすべて任せるが、負け戦となったら自分が指揮をとる」と言っていたそうで、この辺を表して、日清戦争の頃だったか、従軍中の兵士らの雑談の中で、人物の器の大きさを比べる話になったところ、誰かが、「人間の大きさという点では大山 巌を凌ぐ者はおるまい」と言ったところ、別の誰かが失笑し、「いやいや、その従兄弟の西郷従道という人んび比べれば月と星ほどに違う」と言った・・・と。
ところが、その中に、従道の兄の西郷隆盛を知っていた人がいたらしく、「その従道も兄の隆盛に比べると、器の大きさは月と太陽ほどに違った」と言われ、一同、思わずその大きさに天を仰いだ・・・と。
                                         平太独白

by heitaroh | 2011-12-29 07:16 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by sakanoueno-kumo at 2012-01-12 15:24
司馬さんも原作小説の中で、薩摩人には総大将とはどうあるべきかというあり方が、伝統的に型として昔からあったのであろう、と言ってますね。
薩摩的将帥というのは皆、共通していると。
Commented by heitaroh at 2012-01-13 13:09
< sakanoueno-kumoさん

そうですね。私もそう思います。まあ、大山さんの場合は西郷という格好のお手本があり、自分もああなりたい・・・と思ったのでしょうが、でも、西郷はともかく、あの、大久保利通にもそういう傾向が見て取れることを思えば、やはり、薩摩人一般にはそういう志向性があったんでしょうね。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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