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吉田松陰を育てた母が説く風呂の効用
親愛なるアッティクスへ

幕末の思想家・吉田松陰について私が強く印象に残った話があります。
松陰の生家は、松陰の母が嫁いでくる以前は極貧の中にあったそうで、何故そうなったかというと、松陰の祖父が異常なほどの本好きで、江戸詰め時代も家族への仕送りなどそっちのけで給料の殆どを本の購入にあて、そのまま持って帰国したところ、火事で膨大な本の山は家ごと焼けてしまい、以来、祖父は茫然自失のままとなり、一家は辛うじて糊口を凌ぐのが精一杯の状態になってしまった・・・と。
そんな中へ、松陰の母、タキが嫁いできたそうで、この女性は、根っから陽性の人であり、彼女ならば赤貧にあえぐ杉家に明るい空気を持ち込んでくれるに違いない・・・と見込まれての嫁入りだったそうです。
ところが、タキはこの極貧の杉家へ入ると、まず、何をやったか。
何と!毎日、風呂に入ることを宣言したそうです。

こういうと、若い方は失笑されるかもしれませんが、思えば当家も、私が子供の頃には水道こそありましたが、お湯はで焚いてましたよ。
(まあ、商売柄、材木の切れ端には困らなかったということもあるのでしょうが。)
ましてや、江戸期は、蛇口を廻すどころか、井戸からつるべで何杯、何十杯と汲み上げては風呂桶に移し、それから火を起こし(ライターどころかマッチも無い時代です。)、薪をくべ・・・の時代です。
従って、当時は何人もの使用人を抱える大身の家以外、それなりの武家屋敷ですら、入浴は数日おきが普通だったそうです。

当然、初めは周囲も分不相応と反対したそうですが、タキは、その重労働は「すべて自分がやる」ということで説得し、事実、後に(松陰ら)子供達が成長して手伝い始めるまで、すべてを一人でやった・・・と。
この辺のタキの心情は、永冨明郎「武蔵野留魂禄 -吉田松陰を紀行する-」という本によると、「貧しくとも風呂ひとつで心が温まり、翌日への意欲が沸くならばとの思いがあった。貧すれば心までもが貧しくなっていき、更に寒さは一層気持ちを萎えさせる」・・・ということだったそうですが、この話は私も少し思い当たる事があります。

私も以前、ある会社の営業をやっていた時代があるのですが、成績が上がらなくなってくると、人間、声が小さくなるもののようで、そうなると、また不思議に成績が悪くなる・・・。
だから、売り上げが悪い時期が続いていても、気が付く限り、大きな声を出さなければならない・・・わけで、まさしく、「辛いときほど声を出せ!」でしょう。
人間というものは、自分で起こした勢いというものに、自分も巻き込まれるような面があるのかもしれません。
タキは息子松陰が「安政の大獄」で非業の死を遂げて後も生き続け、明治23年84歳の大往生を遂げたそうですが、この点を、同書も、「心身ともに健康な人であったに違いない」と結んでありましたが、なるほどと・・・思わせられるものがあるような気がします。
                                         平太独白
by heitaroh | 2010-12-11 17:45 | 歴史 | Trackback | Comments(4)
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Commented by mohariza6 at 2010-12-12 15:35
清貧の中で、「身の清さ」を保つ精神が、日本の美徳で、

それは、現代の「西洋文明」には無い、公徳な<倫理>と思います。

日本外交も、その「精神」をフルに使うべきと思いますが・・・、

しかし、その「清貧の美徳」を持っている政治家・官僚がほとんど(?)いないので、その「方策」を使うことが、適(か)わない現実が、勿体ない・・・。
Commented by さち先生 at 2010-12-12 20:31 x
いい話ですね。
前向きで明るい人はやっぱり長生きするかもしれませんね。
でも、龍馬伝では、すごくエキセントリックに松蔭が描かれていましたね。このお母さんの影響はどういう風に出ていたんでしょうかね。面白いですね。
Commented by heitaroh at 2010-12-14 11:14
< mohariza6さん

清貧で仕事が出来ない人と、英邁だがモラルに問題がある人では、どちらをリーダーとして選ぶべきなのか・・・ということが良く言われますよね。
もちろん、両方、兼ね備えた人が良いのでしょうが、現実には・・・で、おそらく、この問題は田沼意次と松平定信、田中角栄と三木武夫などに見られるように簡単に結論は出ないことなので、そう考えれば、この両タイプを交互に使っていく必要があると思います。
Commented by heitaroh at 2010-12-14 11:18
< さち先生さん

龍馬伝はあくまで、娯楽番組ですよ(笑)。

史実として見るのであれば、むしろ、昔の大河ドラマ「花神」と、同じく、「徳川慶喜」をご覧になることをお勧めします。
花神は総集編がDVD化されてますし、徳川慶喜は今、ケーブルテレビでやってますから。
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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