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正月に久々に読書三昧にさせられた明治の人物誌 その4
先日の続きです。

中村正直・野口英世に続いて星新一「明治の人物誌」に登場するのが岩下清周という人物ですが、著者は、「おそらく、この人の名前は殆どの人は知らないのではないか?」と前置きしてありましたけど、私は知っていました。
以前、阪急の創始者・小林一三翁の伝記を読んだときに、翁の恩人というか、師匠というような位置づけで出てきたからです。
その後も、明治大正期の実業界の話の中で、結構、耳にする名前でもあり、何かでそれなりに読んだ記憶はありましたが、ただ、私にとっては、「小林翁を引き立てた人」以上の認識はなく、少なくとも、正面からこの人の伝記について読んだことはないはずで、それほど頭の中で具体的に「像」として形を為している・・・という人物ではありませんでした。

安政4年(1857年)生まれと言いますから、著者である星 新一の実父・星 一よりは16歳の年長であり、(ちなみに、他もすべて年長であることから、つまり、この人物誌に置いては野口英世だけが同世代だったということになるわけです。)三井物産パリ支店長、品川電灯社長、三井銀行本店副支配人等を経て、明治29年(1896年)同大阪支店長となり、大阪へ来る・・・と。
大阪では、その辣腕を買われ、翌年、設立されたばかりの北浜銀行を任されることになり、そこで銀行家として海のものとも山のものともつかぬ企業の将来性を読み取ると、そういう企業には積極的な融資を行ったようで、このとき、岩下の支援を受けた企業の中に著者・星 新一の実父・星 一が経営する星製薬があった・・・と。

今となっては考えられない融資手法ですが、この手の話は、この時代は割とあったみたいですね。
昭和電工が含まれていたことで知られる森財閥の創始者・森 矗昶が水力発電を始めるに当たって、当時の取引銀行に融資を申し込んだところ、融資係だった小川栄一(後の藤田観光創始者)から「担保は何ですか?」と聞かれ、そのまま、小川を山奥の滝に連れて行き、「担保はこれです。無尽蔵に落ちてくる水です」と答えたところ、さすがに、才人小川・・・、この型破りな行動に対して、事を理解したようで、周囲の反対を押し切り、融資に応じた・・・とか。

でも、岩下と一番似ているのは、第百三十銀行の創始者の一人にして、後に頭取となった松本重太郎のケースでしょう。
松本と岩下が共通するのは、有望と思われた企業や経営者にはリスクを承知で積極的に融資をする・・・という点であり、それはある意味、金融家の本分でもあるのでしょうが、見方を変えれば、彼らが担保としていたのは「自らの才気」だった・・・とも言えるわけで、当然、融資額も増えた分だけ、リスクも大きくなっていったわけで・・・。
結果、百三十銀行は明治37年(1904年)、日露戦争の最中に破綻・・・。
北浜銀行も、大正3年(1914年)、第一次大戦の最中、融資先の営業不振による債務焦付きなどもあって破綻に追い込まれ、岩下は逮捕の憂き目を見る・・・と。
ちなみに、松本が関わった企業としては、現在の東洋紡績、南海電鉄、JR西日本、日本火災海上保険、アサヒビールがあり、岩下が関わったものには阪急電鉄(阪急阪神ホールディングス)、近畿日本鉄道大林組などがある・・・と。

来週に続きます。
                                         平太独白

by heitaroh | 2010-01-23 08:19 | 歴史 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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