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正月に久々に読書三昧にさせられた明治の人物誌 その3
続きです。

これら、「明治の人物誌」の登場人物についてですが、まず、著者の実父が、著書を通して影響を受けたのみで実際の面識はない中村正直は置くとして、次に登場するのが野口英世博士・・・です。
言うまでもなく、千円札の顔になった大正期を代表する世界的細菌学者であり、幼少の頃に負った火傷のハンディを抱えながらも苦学して偉業を成し遂げ、最期はアフリカの人を伝染病から救おうとして、自らも斃れた・・・、まさしく、少年が模範とするような偉人の中の偉人で、とにかく、私が子供の頃などは二宮金次郎の銅像と同じような感じで、うんこもおしっこもしない人・・・という感じだったのですが、近年では決して、そんな聖人君子などではなく、借金に乱行に婚約不履行に・・・と、かなり、いい加減な面もあったということが言われるようになってきましたよね。

まあ、そのいい加減さも、四角四面の現代と違い、如何にも明治期のそれらしく大胆かつ、おおらかな話で、当時、野口清作といったその若者は、恩師に貸してもらった善意の遊学費用を放蕩生活で使いきってしまうと、あちらこちらから借金し、さらに放蕩生活を続け、それが坪内逍遥の小説「当世書生気質」に、「弁舌を弄し借金を重ねつつ自堕落な生活を送る野々口精作」という人物として登場したことから、「これはまずい」と改名を決意。
で、「世にすぐれる」という意味で「英世」とした・・・と。
確か、改名するには郵便配達上の問題で同一集落の中に同姓同名がいる場合のみ認められる・・・か何かの特例があったため、敢えて、同名の清作という人を騙くらかして(←博多弁?「騙す」よりは、少し罪がない感じなのですが、これに相当する表現が標準語にはないもので・・・。)近所の野口さんちに養子に入れさせて、むりやり、同姓同名を創り出した・・・と記憶しております。

ところが、驚くのはそんなでたら目な生活を送っていても、彼にはこれでもかと言うほど援助者が湧き出てくることです。
郷里の恩師・小林 栄に、畏友・血脇守之助然り・・・。
(やはり、この人はでたらめな生活をしていても・・・、また、決して、モラル的には褒められた生活はしていなくとも、何かしら人に好かれる人だったんでしょうね、私の友人にも一人、そういうのがいましたから、何となく、わかるような気がします。)
そして、その点では、「明治の人物誌」の著者、星 新一氏の実父・星 一もその一人・・・どころか、金額だけならおそらく一番出した人でしょう。
それなのに、野口英世伝には星一の名前は殆ど出て来ない。
わずかに、「凱旋帰国する際の渡航費を出した」という1行しか出て来ないそうで、つまり、実父と英世との親密な交流が知られていないことに実子である著者としては結構、忸怩たる想いがあったのでしょう。

それだけに、他稿と違い、この稿にのみ関しては、それなりに押さえてはあるものの、かなり、その辺の不満というか、「是正」に対する想いが伝わってきましたね。
二人は同郷で、年も近く、かつ、身体にハンディを負っていたことも共通していたらしく、アメリカという異郷の地で過ごす者同士、「親友」と呼んで良い間柄になり、それゆえに、事業で成功した星は高額の帰国費用を出し、英世は星製薬の顧問に名を連ねた・・・と。

明日に続く。
                                         平太独白

by heitaroh | 2010-01-19 17:26 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by sakanoueno-kumo at 2010-01-21 21:00
ふ~ん。野口英世ってそんな人だったんですね。
野口英世といえば、子どもの頃に伝記を読んだ(読まされた?)程度の知識しかありませんでした。
偉人の代表のような人物で、「末は博士か大臣か」の「博士」は、彼のことのように思っていましたが、そんな子どもの模範になるような人物とはおよそ違った豪傑な人だったんですね。
豪傑好きな私は、彼にまつわる本を読んでみたくなりました。
Commented by heitaroh at 2010-01-22 11:38
<sakanoueno-kumoさん

確かに(笑)。
昔は、野口英世と言えば、二宮金次郎の像と同じようなもので、偉人という印象が強かったですが、今はそうでも無いみたいですよ。
豪傑・・・というよりも、石川啄木と同じような感じでしょうか。
あるいは、香川照之さん演じる岩崎弥太郎に近いような人で、実際、今では彼の業績の多くは否定されているみたいですし、自己宣伝が上手な人だったのかもしれません。
しかし、彼の金銭へのルーズさ・・・・、そして、それが気にならない性格というのは、やはり、大物ということの裏返しでもあったのだと思います。
そういうことが気にならなかったからこそ、ああいう過酷な環境から、あれだけのことが出来たのだろう・・・と。
そして、それでも、あれほどに支援者が現れる辺りは、やはり、その辺まで含めての彼の人徳だったと思います。
<< 小林繁氏の急逝に振り返る「空白... 大河ドラマ「龍馬伝」に見る時代... >>


国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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