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今も変わらない「戦争を知らない軍人たち」の原理
親愛なるアッティクスへ

先日、NHKで『NHKスペシャル 日米開戦を語る「海軍はなぜ過まったのか」』というのをやってましたよね。
これは、この分野で研究・著作が多い、半藤一利澤地久枝の両昭和5年生まれ戸高一成を加えた各氏が、同じくNHKで8月に放送された「NHKスペシャル日本海軍 400時間の証言」という番組で紹介された旧帝国海軍軍人らによる海軍反省会と呼ばれる討論会での録音テープを聴いて思うところを語る・・・というものでした。
で、この中で、私がもっとも、印象に残ったのが、澤地氏の「この人たち(海軍軍人)は戦争という物を知らないんだなと思った」という言葉でした。
曰く、「陸軍の方は何だかんだ言っても、その後も、中国と戦争したりしているけど、海軍の方は日露戦争以来、戦争したことがない。だから、海軍は日露戦争での日本海海戦をそのまま、引きずっている」と。

確かに、言われてみれば、その後の日独戦争(第一次世界大戦)にしても、シベリア出兵にしても、日中戦争にしても、海軍から犠牲者が出ていないとは言わないけれど、事実上、後方支援と兵員輸送だけで、本格的な海軍の戦闘というのはやってませんよね。
(日露戦争から10年後の第一次大戦では、日本海軍は日英同盟の関係から地中海で後方支援に当たっており、そのため、少なからぬ犠牲者を出していますが、少なくとも、大艦隊同士の会戦というのは間違いなく経験していないわけです。)
ということは、35年以上、海軍は戦闘を経験していないということになり、となれば、日露戦争当時、35歳だった人は70歳、25歳だった人で60歳になるわけで・・・。
半藤氏によると、太平洋戦争開戦時に日露戦争を経験していたのは山本五十六永野修身の二人しかいなかったといいますが、その2人でさえも実際には新入社員に毛が生えた程度の物ではなかったでしょうか。

私は、この番組を見るまで、この、澤地久枝という人は知りませんでしたが、あの録音テープから、このことを読み解いたその慧眼には正直、感服しましたよ。
私は本来、女性が戦争のことを語るときには、どうしても、戦争を、「妻」とか「母」などの視点で見ることが多いことから、戦争そのものを客観的に見てるようには思えず・・・、実際、番組中でも、この人の代表作には、「妻たちの二・二六事件」「昭和史のおんな」・・・などとありましたので、おそらく、この人単独のインタビューであれば見なかったでしょうね。
しかし、このコメントについてだけは、この人は女性でありながら、戦場を知っている男性以上に戦場のことを知っておられるのではないかとさえ思いましたよ。

ただ、この点で、私には思い出すことがあります。
以前、ある、自称有識者なる人と話したことがあるのですが、その際、彼は、「私は、実際の戦場を知っている。ジャーナリストとして、結構、行ったからだ」と言いました。
つまり、「だから、私の見識は高い」ということだったのでしょうが、そのとき、私は、どうしても話がかみ合わない相手だったこともあり、「君はわかっていないね。勘違いしている。なぜなら、今も世界の戦争を動かしている人たちの大半は実際の戦場を知らないからだ」と言い放ちました。
これって、あながち、強弁でもなかったのかもしれませんね。
                                         平太独白

by heitaroh | 2009-12-28 08:11 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
Commented by 芙蓉 at 2009-12-29 08:58 x
おはようございます。
今年もいよいよ残すところ、あと三日となりましたね。
ブログ、いつも楽しく拝見しています。
最近は、メモに書いても忘れるお年頃??.....の私ですが、
平太郎さんは、いつも日ごろから、メモにして、
気になること、書留めていらっしゃるのですね?
素晴らしいですね。
確かに私も、
ブログをするようになって、回りへの関心条項が増えました。
街を歩いても、人と話しても、ニュースを見ても、
目を、耳を、感性を、ちょっぴり働かせて、老化防止にも良さそうです。
すぐ忘れますから、ホント、すぐメモは大事ですね。

さて、今回の記事も興味深かったです。
特に最近、坂の上の雲の影響か、海軍のこと、興味津々でしたから。
歴史をからめた現代考、唸りました....♪。
Commented by heitaroh at 2009-12-29 14:04
< 芙蓉さん

昔はメモなどいらなかったんですけどね(笑)。
でも、私も、ブログを初めて以来、メモとデジカメは手放せなくなりましたね。
結構な呆け防止になってるでしょうか(笑)。

坂の上の雲・・・、私は第一回での阿部寛の叱責が忘れられません。
以来、子供に、ことあるごとに、「貴様、いつまで寝とるか!」、「冬休みだからといって、だらだらするな!」を連発しております(笑)。
<< 地方都市にまで画一的な物ばかり... 机上山積みメモ紙処分の為の書き... >>


国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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