人気ブログランキング | 話題のタグを見る


花山大吉にみる近衛十四郎という役者とその時代 その5
親愛なるアッティクスへ

前回の続きです。

本当はこのシリーズは打ち止めのはずだったのですが、昨日、ようやく、「素浪人花山大吉」の最終回を見終えまして・・・、ちと、感じるところがあり、起稿することにしました。
で、まず、この番組は全体を通じて脚本も良かったですよ。
冒頭ラストを見て、まったく繋がるようには思えないのがしっかりと辻褄があってましたからね。
で、それはこの最終回についても活かされており、特に、最終回ということもあって、見せ場の立ち回りのシーンが二度もあるし、特に最後の方の殺陣はかなり大がかりなもので、それはそれで最終回に相応しい豪華なものだったのでしょうが、それだけにいつもより短い時間でストーリーを作らなければならないわけで・・・。

でも、それ以上に私が感銘を受けたのはラストの、主役の近衛十四郎翁演ずる花山大吉と相棒の焼津の半次の別離のシーンでした。
突然、別れを切り出す大吉に、「待ってくれよ、ダンナ。さっき、一緒に旅してきたお咲と別れたばっかりだと言うのに、今また、ダンナと別れるなんて」と今にも泣きそうになる半次に対し、「これからのことを考えれば、俺は江戸に帰ることにした」と言う大吉・・・。
「これからのことと言われちゃあ、引き留めることは出来ねえな」と言いながらも、哀しい表情を見せる半次をよそにあっさりと立ち去ろうとする大吉・・・。
まあ、この辺は、大吉の本心ではなく、どろどろの別れにしたくないという大吉ダンナの美学だったのでしょうが、でも、半次だけはちと立場が違うんですよ。
つまり、お咲ちゃんにも大吉ダンナにも、帰るべき宛てがある・・・ということです。

帰る側は良いんですよ。
帰れば色々と懐かしい顔もあり、それなりに新鮮な世界が待っているわけでしょうが、帰られる側はそうはいかないんですよね。
ガランとした誰も居なくなった部屋がそれまでの賑やかさの分だけ胸に染みるわけで。
つまり、彼らと違い、帰るべき家を持たない半次の哀しみは深く、大吉にもそれがわかっていたからこそ、敢えて、あっさりとした態度を取った・・・と。
思わず、本田技研工業創業者本田宗一郎さんが、共同経営者だった藤沢武夫さんと同時引退するときに、「まあまあだったな」、「ああ、まあまあだった・・・」という言葉だけで別れた・・・というエピソードを思い起こしました。

で、「達者で暮らせよ」と言い残し、去りゆこうとする大吉の背へ、「ダンナ~」と涙声で呼びかける半次に、大吉は振り向き、「情けない顔するな、男は笑って別れるモンだ」と声を掛ける・・・。
すると、半次は「そうだなぁ、ダンナ。俺・・・、笑ってるだろ」と、これ以上ない見事な笑い泣きで応える・・・と。
いやあ、品川隆二という人のこの笑い泣きの演技はとにかく絶品でしたよ。
笑い泣きという点に限って言えば、私はこれまで、これ以上の演技は見たこと無いですね。
半ばは演技ではなかったのかもしれませんが・・・。
でも、欲を言えば、最後は大吉の姿が見えなくなり、突然、「ダンナ~」と叫ぶ半次のアップで終わるのではなく、むしろ、とぼとぼと反対方向へ歩き出し、遠ざかる半次の背中・・・で終わって欲しかったですね。
                                         平太独白
by heitaroh | 2009-06-22 08:06 | 文学芸術 | Trackback | Comments(2)
Commented by 南まさと at 2009-06-22 19:54 x
こんばんは。
早速拝見いたしました。
確かに仰るとおり、半次には帰る場所がないんですよね。
いやぁ・・とにかく2人の別れが悲しくて、そこまで気が回らなかったです(^_^;

品川さんの演技は、本当に素晴らしかったと思います。
きっとご自身の、兵庫から大吉までの5年弱の思いが重なってらしたんでしょうね。
見ていて思わずもらい泣きしてしまいました。
この番組に出会えて本当に良かったです。

Commented by heitaroh at 2009-06-23 16:49
<南まさと さん

>ご自身の、兵庫から大吉までの5年弱の思いが重なって

まさしく。
あの笑い泣きは、この番組への品川さんの思いでもあり、必ずしも演技ばかりではなかったと思いますが、それにしても素晴らしい演技でした。
私も、あのラストシーンだけは思わず、目頭が熱くなってしまいましたよ。
<< 山崎の戦いに想う秋山幸二監督の... 我々の世代にとっての真横のカリ... >>


国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
ライフログ
最新のコメント
sakanoueno-k..
by heitaroh at 19:20
おっしゃる通りですね。 ..
by sakanoueno-kumo at 14:59
> sakanoueno..
by heitaroh at 18:01
堀で防御を固めたような大..
by sakanoueno-kumo at 15:36
> sakanoueno..
by heitaroh at 11:34
> sakanoueno..
by heitaroh at 11:24
おっ! ここ行かれたん..
by sakanoueno-kumo at 22:00
なるほど。 そこまでは..
by sakanoueno-kumo at 21:49
> sakanoueno..
by heitaroh at 18:13
おっしゃるとおり、悪人と..
by sakanoueno-kumo at 13:53
> sakanoueno..
by heitaroh at 11:42
案外、美魔女妻に叱られて..
by sakanoueno-kumo at 21:20
> sakanoueno..
by heitaroh at 19:43
だけど、黒木華ちゃんって..
by sakanoueno-kumo at 10:59
> sakanoueno..
by heitaroh at 18:21
検索
タグ
(67)
(56)
(55)
(53)
(51)
(46)
(43)
(42)
(42)
(36)
(33)
(32)
(31)
(31)
(30)
(28)
(27)
(27)
(26)
(26)
(25)
(24)
(24)
(24)
(24)
(23)
(22)
(21)
(21)
(21)
(21)
(20)
(20)
(19)
(19)
(18)
(18)
(17)
(17)
(17)
(17)
(16)
(16)
(15)
(15)
(15)
(14)
(14)
(14)
(14)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(12)
(12)
(12)
(12)
(12)
(11)
(11)
(11)
(11)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(9)
(9)
(9)
(9)
(9)
カテゴリ
以前の記事
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
最新のトラックバック
フォロー中のブログ
ブログパーツ
  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧