2008年 05月 31日 ( 1 )

『小佐野は一個の小佐野であった』 五島昇、決断の背景
親愛なるアッティクスへ

以前、清水一行著、「花の嵐」という本を読みました。
同書は、国際興業創業者の小佐野賢治について書かれた小説ですが、小佐野氏といえば、国際興業創業者・・・というよりも、むしろ、ロッキード事件の被告人に名を連ね、故田中角栄元首相の「刎頸の友」であるとか、「昭和の政商」とも呼ばれたダーティなイメージでご存じの方も多いのではないでしょうか。
で、なぜ、私が彼に興味を持ったかというと、ひとつ、以前から引っかかっていたことがあったからです。

以前、ある昭和三十年代に名を馳せた老財界評論家(元財界誌記者)、三鬼陽之助翁の著書を読んでいたとき、ある記述が目にとまりました。
昭和34年(1959年)、東急の創始者にして、強引な吸収合併を繰り返したことから「強盗慶太」と呼ばれた五島慶太翁が亡くなったとき、晩年の五島翁に食い込んでいた二人の人物がいた。ひとりは、小佐野賢治で、もう一人は、ホテルニュージャパン火災悪名を高めた横井英樹であった」・・・と。
それに対して、五島翁逝去で名実共に東急のTOPとなった翁の実子の五島 昇新総帥(元日本商工会議所会頭)は、この二人に対してどのような処断を下したか・・・。
それが、「小佐野は残し横井だけを切る」というものでした。
このとき、東急内部には、「この際、小佐野も切るべきだ!」という声もあったと言いますが、五島 昇は、その声を抑えて、敢えて、小佐野は残したと・・・。
私が長年、引っかかっていたのは、この部分でした。
つまり、このときの「小佐野と横井」のは一体、何だったのか・・・と。

五島昇は1916年8月、東急財閥の御曹司として東京で誕生。
一方、小佐野は、1917年2月、山梨県甲州市勝沼町に住む家さえない極貧小作農の長男として、また、横井は、1913年7月、愛知県中島郡平和町に貧しい農家の子として誕生しています。
つまり、五島 昇と小佐野は同学年であり、横井のみは3つ年上となるわけですが、横井はさておき、五島と小佐野、この、まるで違う生い立ちをもった二人の同級生はお互いをどうみていたのでしょうか・・・。
私には、二人の間には、何か微妙な友情のようなものがあったように思えるのですが・・・。
(この二人の関係は、そのまま、政界に置ける田中角栄中曽根康弘の同級生同士の微妙な友情に投影されるようにも思えます。中曽根と五島昇は東大時代の本物の同級生であり、つまり、この四人はタスキがけの友情だったように思えます。)
そこで、この小佐野について書かれた物を求めたわけですが、結論を言えば、それは、「小佐野は一個の小佐野であったが、横井は一個の横井ではなかった」ということなのだと思い至りました。

小佐野は、前述しましたように、ロッキード事件に連座したことで、どうしても、「政商」としてのダーティなイメージが強いようですが、一方で、五島慶太翁もさじを投げた会社立て直し成功するなど、会社再建に対する手腕は翁さえも一目おいており、つまり、別に東急に寄生しなくとも、十分に一個の事業家として存在していたといえるでしょう。
それに対し、横井は、白木屋乗っ取りなどで総会屋を巻き込んでの手段を選ばぬ抗争劇などに見られる強引さという点では、強盗慶太などと大差なかったのかもしれませんが、ただ、小佐野が東急とは別個に自らの基盤を築いていたのに対し、横井はあくまで、五島慶太の名を利用し、大東急に寄生することで利益を得ようとする寄生虫に過ぎなかったでしょうか。
父亡き後の五島 昇の目は間違ってなかったようで、小佐野はロッキードに連座したものの山梨交通を始め数多くの倒産寸前の会社を立て直し、かつ、「人切りをしない事業家」として、その評価は没後さらに高まっていると言われるのに対し、横井はホテルニュージャパン火災では、数々の違法運営により、多くの犠牲者を出し、業務上過失致死傷罪禁固3年の実刑判決を受けるに至ったことからも明白であったろうと思います。

ちなみに、
小佐野賢治は1986年死去。享年69歳。
五島昇は1989年死去。享年72歳。
横井英樹は1998年死去。享年85歳。

・・・賛否両論、色々あったでしょうが、今となっては、「つわものどもが夢の跡」でしょうか。

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by heitaroh | 2008-05-31 08:13 | 経済・マネジメント | Trackback | Comments(0)


国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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