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昭和は遠く成りにけり、「父・緒方竹虎と私」を読み終えて 1
親愛なるアッティクスへ

先日、緒方 四十郎著、「遙かなる昭和―父・緒方竹虎と私」という本を読み終えた。
著者の父君で、この本のタイトルにもなっている緒方竹虎翁は、現在では、あまり、知る人もいなくなったのかもしれないが、地元・福岡では「あの岸 信介も、緒方在りせば首相になること能わなかった」と言われるほどに、未だに知る人ぞ知る名前である。

昭和は遠く成りにけり、「父・緒方竹虎と私」を読み終えて 1_e0027240_8393782.jpg(←福岡市の都心部付近にある旧緒方竹虎邸跡。)

その翁が、最近、あの!緒方貞子女史の舅であるということを聞き、かねてより、是非、その二人を結びつける立場にある著者の話を聞いてみたいと思っていた。

残念ながら、著者が夫人と結婚されたのは父君没後とのことらしく、両者の直接のエピソードなどを聞くことは出来なかったが、差し引いて有り余るくらい、父・竹虎という、昭和史に名を残す人物を「膝下」より眺めた貴重な話を知ることが出来た。
(特に、著者が米国留学中に父の死と遭遇する前後の手紙のやりとりについての記述は、竹虎翁の末子への細やかな情愛が伝わってくるようで、思わず、胸が詰まると同時に、羨ましくもあった。)

ただ、私は、不覚にも、この本を読むまで著者のことはまったく存じ上げなかったのだが、この本は、同時に、著者の見識の高さを印象づけた一冊でもあった。
特に印象に残ったのが、戦後、著者が、まだ学生であった頃に当時の時事について、今読んでも、極めて適切な意見を持っておられたことである。
一部抜粋すると、サンフランシスコ講和条約においての、吉田 茂の演説について、こう批評している。
「第一に、彼は奄美大島、小笠原諸島が歴史的にみても日本の領土であり、決して侵略によって獲得したものでないことを史実を挙げて立証すべきであった。
 第二に、過去の日本の侵略によってもっとも大きな痛手を受けた中国民衆と同席することができないことを遺憾に思うこと、アジアなくしては日本はありえないという歴史的地理的条件からして、日本政府は中国民衆との協力、なかんずく経済的協力を心から望んでいる旨を力説すべきであった。
 第三に、彼は不必要な程度にまで共産主義の脅威を力説しすぎた。我々とても共産主義の浸透の危険を感じないわけではないが、共産主義は社会的不正義、政治的圧制の存するところに、最も育ち易い。
 第四に、日本が昔日の日本でなく、新しい国民に生れかわっていることを述べるにあたっては、日本は、新しい憲法の定める国民主権、基本的人権の保障という二つの基本原理を講和後も守り抜く決意をもっている旨を強調して、ソ連修正案に答えるべきであった。
 第五に、演説を結ぶにあたっては、日本はこの上なく世界平和を希求するものであること、何故なら、日本こそは、世界史上において原子爆弾の洗礼を最初に受けた国民であり、あの惨澹たる原子爆弾の魔力を考えるとき、次の大戦が必ずや世界の破滅と人類の終焉をもたらすものであることを他のいずれの国民にもましてよく認識しているからであること、日本が降伏後、率先軍備を放棄したように全世界が一日も早く戦争と軍備を放棄する日が来ることを望むものであること、何故なら、我々は剣によって立つものは剣によって亡ぶとの堅い信念を有するからであることを力説すべきであった」

明日に続く。
              平太独白
by heitaroh | 2007-07-25 08:42 | 歴史 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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