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現存する日本最古の戸籍 後編
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きです。

その奴隷ですが、やがて、8世紀に入ると、奴隷逃亡が相次ぐようになり、延暦8年(789年)に「良民と奴隷の間に出来た子は良の身分とする」と法で決まると、平安時代中期、なし崩しに奴隷制崩壊に至ったと言います。
で、ほぼ、時を同じくして、戸籍制度そのものも「内実を失う」のだそうです。
その理由は明快で、「重い課税を嫌って、男子は何とか口実をつけて戸籍から逃れた」からだとか。
曰く、「どの戸籍でも女子の数が著しく多いこと、残疾廃疾成年男子にばかり見られることなど、ミエミエのありさま。これでは戸籍は意味を失う」と。
そして、その兆候は、実は早くも、この大宝2年(702年)の「川邊里戸籍」でもうかがえるとか。
この戸籍の筆頭者、肥君猪手は、郡の長官でありながら、「彼の一族124人のうち納税者は15人なのに対し、免税者109人」なのだとか・・・。
確かに、分かり易すぎる(笑)。

その後、戸籍は、鎌倉~室町期「無戸籍の時代」を経て、江戸期、キリシタン弾圧に端を発した宗門人別帳ができ、これが戸籍の役割を果たすことになったそうですが、ところが、明治維新において新たに成立した明治政府は、新国家建設のモデルを古代の太政官制に求めたことから、明治5年(1873年)、新たに発布された「新律綱領」においても、大宝令の制度をそっくり下敷きにしており、また、封建的な主従関係、つまり、支配・被支配関係から国民を解放する狙いもあり、ここに突如、古代の「戸籍」というものが復活してきたのだそうです。

ただ、戦前の戸籍でも、現在の物とは違い、家長制度の物で、「分家」とか、「隠居」などという用語が平然と戸籍に登場してくるくらいですから、ましてや、明治初期の出来たばかりの戸籍には、「妾は夫の二等親」と公式に定められていたそうで、これには、この羨ましい制度・・・じゃなかった前近代的な制度は、当然、キリスト教社会である欧米社会から「オー・マイ・ガッ」的な轟々たる非難にさらされることになったとか・・・。
明治政府は、この非難に耐え(?)、妾公認を撤廃したのは10年後の明治15年(1883年)、旧刑法施行によってであったと言います。

ちなみに、3世紀の倭国を紹介した魏志倭人伝にも、「上流階級は皆4~5婦、下戸も2~3婦。婦人は淫せず嫉妬せず」とあるそうで、江戸時代でも、大名家では子供が出来ないと「お家断絶」になる・・・、つまり、家臣丸ごと、失業武士になってしまう恐れもあり、その為、殿様ともなれば、複数、夫人が居るのは当たり前だったわけですし、庶民でも大身商家などになると、貧しい娘が妾に入る「妾奉公人」なるものが普通にあったわけですから、(これは今でも健在?)ご婦人方、現代的倫理観で往事を測るなかれ・・・ですよ。

ちなみに、その「川邊里」が存在した現福岡県糸島郡志摩町から前原市、福岡市西区元岡にかけての地域は、実は、私の母方の祖母の里でもあります。
祖母の実家は、元々、田舎貴族のような高貴な家系だったらしく、祖母は、郡にまだ3台しか自転車がない時代に、そのうちの2台を妹と二人で所有していたそうで、ちなみに、母曰く、今でも、「その気位の高さ」には辟易するときがあるとか。
ろくでもない世界ですね(笑)。
ということで、私には、この「川邊里戸籍」に出てくる肥君家の人たちは、何だか、田舎の親戚のように思えてしまうんですが、気のせいでしょうか(笑)。
                       平太独白
by heitaroh | 2006-12-15 17:48 | 歴史 | Trackback | Comments(0)
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国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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