人気ブログランキング | 話題のタグを見る


中国、「客家の里」の建築形態、円形土楼への私的考察。
親愛なるアッティクスへ

先日、別件で捜し物をしていたところ、昔、あちらこちらに行ったときのレポートが出てきました。
ちょっと、興味深かったので、ここに披露してみたいと思います。
で、第一弾として、まずは、平成15年アジア太平洋センター主催の中国厦門、永定の視察旅行に参加したときの物です。

中国、「客家の里」の建築形態、円形土楼への私的考察。_e0027240_1721880.jpg(そうです。書かされたんですよ、当時・・・(笑)。すっかり、忘れてました。)

メインは、永定にある客家と呼ばれる人たちの住居であり、あまり、他には類例を見ない、独特の建築形態を持つ円形土楼(←)の視察でした。

以下。

----------------------------------------------------
今を遡る事、二千数百年の昔。山東半島から遼東半島にかけての環渤海地域一帯では、春秋戦国時代の動乱を逃れ、東へと歩を進める人々がいた。彼らはそのまま、海を渡り、我々、日本人の一祖となった。渡来人である。
その数百年後、同様に中央での戦火を避け、南に逃れた人たちがいた。彼らはその後も南進を続け、中国南部に広く分布する事になった。それが「客家」である。

客家は漂泊の民である。その語感には、客と言うより「よそ者」としての蔑称さえ漂い、事実、迫害の歴史さえあったと言う。
にも関わらず、洪秀全、鄧小平、葉剣英、朱徳、李登輝の各氏を始め、国境に拘る事無く、多数の有力者を輩出した「客家」と言う物のネットワークと組織力と言ったものについてこそ、私は当初、興味があった。
だが、やはり、この命題は突き詰めるには、少々、大きすぎたようである。
そこで、これにはあっさりと白旗を掲げ、とりあえず建築業に携わった者の一人として、これら土楼の中でも特徴的な形態を持つ円形土楼について、私が感じたなりの事を述べてみたい。

中国、「客家の里」の建築形態、円形土楼への私的考察。_e0027240_1727531.jpgまず、土楼は木造建築と捉えると誤りやすい。むしろ、コンクリート造と捉えるべきである。
つまり、木造部分は日本におけるコンクリート建造物に固定されている木部を思い浮かべてみればいいであろう。
従って、四階建ての居住部分の柱などは、日本の木造建築物のように通し柱である必要はなく、1フロアーごとのぶつ切りである。
これが、日本の木造建築であれば、少なくとも1階と2階、2階と3階、3階と4階のように、互い違いに2フロアーずつを貫いた柱が必要であり、できれば、1階から4階までを貫いた通し柱が4本は欲しいところである。(現実にはなかなかに入手困難であろうが。)

中国、「客家の里」の建築形態、円形土楼への私的考察。_e0027240_17303450.jpg次に、何故、この土楼が作られたかであるが、これは防衛の為と言う事であったが、当初、私はこの説に懐疑的であった。何故なら、一見した所では、土楼には城砦としては最も必要欠くべからざる機能が見当たらなかったのである。
物見櫓の存在である。
土楼によっては、七百人も居住していたというが、そうであれば、少なくとも、四方に敵の来襲を知らせる櫓を屋根の上に配備する事は、決して無理な事ではなかったであろう。
にも関わらず、その存在と思える物が、どの写真にも見当たらないのである。
その答えは、やがて、土楼本体が教えてくれる事になる。

中国、「客家の里」の建築形態、円形土楼への私的考察。_e0027240_17492551.jpg車が目的地に近づくにつれ、窓外に土楼がちらほらと見え始めた辺りから、私はある一つの事に気付いた。それは、土楼には窓はあっても窓ガラスがないのである。
屋根に置かれた雪割用の瓦から、冬季には積雪が多い事が予測されたが、それにしてはガラスもなければ板もないと言う状態では、居住空間としては、少々、過酷過ぎるのではなかろうか?この疑問は、土楼の内部に入り、内側から窓を見た瞬間、氷解した。窓があったのは、すべて屋外階段部分であり、これはそのまま、物見櫓として使えるのである(←)。
しかも、土楼は、その断面を見せる事により、改めてその堅牢さを印象付けた。
これでは、火縄銃や大型の木槌などの破砕道具も歯が立たなかったであろう。

中国、「客家の里」の建築形態、円形土楼への私的考察。_e0027240_1746710.jpgさらに、土楼自体、わずかに内側に傾いて建てられた事により、お互いの荷重でもって、その巨大な体を支えあうような構造になっており、その事が堅固さを、尚一層、容易ならざるものにしていたことにも驚嘆を禁じ得なかった。(←)

一方で、1970年代までは見られたと言う、近隣同士の深刻な武力闘争でも、「ここを根城に戦う」と言う事はあまりなかったようで、その防壁は、あくまで野盗、山賊に対する防衛の為のものであったという。
実際に、土楼の一つには、「1920年代に山賊が防壁を破って侵入しようとしたが、防壁の堅固さの前に一部を破損させただけで目的を達する事ができずに引き揚げた」ときの痕跡が今も見受けられる。
ある意味、20世紀に入っても、中国では梁山泊の世界が生きていたと言う事であろうが、住民にとっては決して笑えない現実だったであろう。

最後に、この土楼が、その特徴的な形である円形になった理由は、居住する者の平等を確保する目的があったそうである。
余談だが、日本にも中世、唐傘(からかさ)連判状と言うものが存在した。
豪族同士の連合体の結成の際などに使われたもので、円形に署名していく事により序列を生じさせないのである。
これこそが、他の図形にはない、円だけが持つ特徴であると言えよう。

----------------------------------------------------
以上、お粗末様でした!

平太独白
by heitaroh | 2005-05-28 08:48 | その他 | Trackback | Comments(0)
<< ドームの夜に思うプロ野球選手は... 大河ドラマ「花神」での教育者と... >>


国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。

by 池田平太郎
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
ライフログ
最新のコメント
> sakanoueno..
by heitaroh at 18:13
おっしゃるとおり、悪人と..
by sakanoueno-kumo at 13:53
> sakanoueno..
by heitaroh at 11:42
案外、美魔女妻に叱られて..
by sakanoueno-kumo at 21:20
> sakanoueno..
by heitaroh at 19:43
だけど、黒木華ちゃんって..
by sakanoueno-kumo at 10:59
> sakanoueno..
by heitaroh at 18:21
> sakanoueno..
by heitaroh at 18:06
今は昔と違って、チームの..
by sakanoueno-kumo at 15:42
中村メイコさんの前日に八..
by sakanoueno-kumo at 15:31
> sakanoueno..
by heitaroh at 15:33
いわゆる「危機管理」と「..
by sakanoueno-kumo at 11:39
> sakanoueno..
by heitaroh at 12:58
あけましておめでとうござ..
by sakanoueno-kumo at 17:36
> sakanoueno..
by heitaroh at 16:54
検索
タグ
(67)
(56)
(55)
(53)
(50)
(46)
(43)
(42)
(42)
(36)
(33)
(32)
(31)
(31)
(30)
(28)
(27)
(27)
(26)
(26)
(25)
(24)
(24)
(24)
(24)
(23)
(22)
(21)
(21)
(21)
(21)
(20)
(20)
(19)
(19)
(18)
(18)
(17)
(17)
(17)
(16)
(16)
(16)
(15)
(15)
(15)
(14)
(14)
(14)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)
(12)
(12)
(12)
(12)
(12)
(11)
(11)
(11)
(11)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(10)
(9)
(9)
(9)
(9)
(9)
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
最新のトラックバック
フォロー中のブログ
ブログパーツ
  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧