親愛なるアッティクスへ
映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」を見ました。
先日も、
昭和27年公開の
山本薩夫監督作品
「真空地帯」について述べた際に、「もう、日本は太平洋戦争を舞台にした映画は作るべきではない」と申し上げたばかりですが、やはり、今回のこれもその域を出ていないな・・・という観を強くしました。
で、まず、思ったのが、皆、
良い人ばかりで悪人が一人もいないんですよ。
まあ、この映画は史実に基づいているということでしたが、それでも、日本側もアメリカ側も皆、良い人ばかり・・・というのも、ちと、あり得ないでしょう。
先日の新聞にも、当時、疎開先の子どもに親が送ってきた豆を没収して、密かに自分がそれを食らう教師の話なども出てましたが、疎開先でもそういう状況ですから、ましてや、絶望的な戦場であれば、「真空地帯」での古参兵たちの新兵イジメなどの狂気を見るまでもなく、誰しも、他人を蹴落としてでも自分だけは生き残りたいと思うのが人情ですよ。
そんな状況の中で誰一人、悪い人がいないというのは娯楽作品としてもちょっとどうなのかな・・・と。
次に思うのが、毎度、そうなんですが、登場人物が皆、血色が良すぎるんですよ。
食糧も水もない絶望的な戦場でしょ?
であれば、頬がこけてないなんてあり得ないわけで、それが、阿部サダヲさんや酒井敏也さんなど、いくら民間人とはいえ、普通に丸顔がいたのにはどうにも首を傾げるところで、つまり、日本側の登場人物は皆、減量は当然でしょう。
でもって、最近の俳優さんの減量は減量してもなかなか、リアリティが出ないのが、医師や栄養士などの指導の上に減量しているからか、痩せてはいても割合、血色が良いんですよね。
その点、「真空地帯」での西村 晃さんなどは白黒とはいえ、どす黒い顔色でしたし、病気で後方に下げられてきたという設定の加藤 嘉さんなどは蝋人形のような白い顔してましたよ。
一方で思うのが、数年に分けてNHKで年末に放送されていたドラマ「坂の上の雲」の項でも申し上げたことですが、今どき、こういうドラマをやること自体、私には、「やることなすことうまく行っていない日本人が、若かりし頃の自分の写真を引っ張り出してきて、自分でうっとりしている」ようにしか思えないんですよ。 この点で、この映画にも同様のことが感じられてなりません。
果たして、日本経済が好調だったならこの作品の映画化はあったのか・・・と。
まあ、同じ事はアメリカにも言えることでしょうけどね。
平太独白