ドラマ「白洲次郎」に見る永野重雄との論争の是非 後編
親愛なるアッティクスへ

昨日の続きです。

で、その、白洲次郎永野重雄の両雄が飲み屋で乱闘するシーンについてですが、乱闘が済んだ後、二人は互いの主張の違いについて軽く論争してましたが、これを聞く限りでは、私は白洲氏の言うことの方に理があると思いました。
まず、永野翁は、「白洲、おまえは何だ!俺は鉄屋だ。広畑製鉄所のことなら、すべての施設の図面が頭に入っている」と言ってましたよね。
「永野さんは、元々、技術屋上がりか・・・」と思っていたら、あの人、よく考えたら東大法学部卒ですよね?
まあ、元々が優秀な人でしょうし、業績不振に喘ぐ富士製鉄の立て直しを渋沢栄一から言われて、苦闘しながらも、見事に立て直した人ですから、その過程で技術的なことにも精通していったのかもしれませんが、ただ、「施設のすべてに精通している」というのは少し言いすぎではないか・・・と(笑)。

それに、それほどに鉄屋を公言するのであれば、なおのこと、彼の言い分には無理があるように思います。
なぜなら、永野翁は売却されると自分の懐が痛む利害当事者だからです。
まあ、永野翁の自分の仕事への誇りというのはわからないでもないんですが、これはやはり、利害がない人が言うべきで、これでは、役所が自分の省庁の権益を減らされることに抵抗するのと一緒で、少々、「我田引水」の誹りを受けるのはやむを得ないと思います。

また、「これからの日本を支えるのは鉄だ!」という永野翁に対し、「貿易だ」とやり返す白洲氏のやりとりがありましたが、これも白洲氏に理があると思いましたよ。
まあ、確かに、「鉄は国家なり」で、その後の日本経済の伸張に製鉄が大いに貢献したことは認めざるを得ないところではありますが、あの、終戦から5年しか経っていない昭和25年の段階では、その前に復興の端緒・・・、平たく言えば、元手となる外貨をどうにかしなくてはならないわけで、つまり、いくら良い鉄を作れる技術があったとしても、また、燃料は国内の石炭を人海戦術で使ったとしても、原料となる鉄鉱石はどこからか買ってこなければならないわけで・・・。
かつて、会田雄次という老批評家は、この広畑売却について、白洲氏を、「戦後のどさくさに紛れて外資に広畑を売り渡そうとした売国奴」などと言っておられましたが、永野翁の批判というフィルターを通してみる限りでは、私はその後の通産省(現経産省)の設立にみられるような貿易立国という発想にまでは踏み込まないとしても、少なくとも、あの時点での白洲氏の考えは必ずしも間違っていなかったと思います。

それにしても、1話の冒頭で、大正時代の神戸のキリスト教教会の光景が描かれてましたが、その中で、お祈りするときに、「イエスはん、何でも出来る偉い人~♪ イエスはん、あてのこと、好いてはる~♪」なんて歌ってたんですね。
思わず、何て、虫が良い歌なんだろう・・・と(笑)。
もう一つ、印象に残ったのが、奥田瑛二さん扮する次郎の父、白洲文平の最期です。
没落後、大分県竹田市の農家で余生を過ごされていたようですが、ああいう風に、「のたれ死に」するのも男としては悪くないな・・・と思いましたよ。
                                         平太独白

by heitaroh | 2009-11-27 18:32 | 歴史 | Trackback | Comments(2)
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Commented by 全く。 at 2010-10-08 14:21 x
>「戦後のどさくさに紛れて外資に広畑を売り渡そうとした売国奴」

下記が詳しいです。

http://www.iax.co.jp/subscriptions/impressions_71.html

http://blog.livedoor.jp/k_guncontrol/archives/50581427.html
Commented by heitaroh at 2010-10-11 13:10
< 全く。さん

ありがとうございました。

後ほど、拝読させて頂きます。
<< 万里の長城に佇む大統領にヒート... ドラマ「白洲次郎」に見る永野重... >>


国際問題からスポーツまで、世の出来事に対し独自の歴史観で語ります。
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プロフィール
池田平太郎

昭和36年 福岡市下人参町(現福岡市博多区博多駅前)で代々大工の棟梁の家に生を受ける。

昭和43年 博多駅移転区画整理により、住環境が一変する。
物心付いて最初に覚えた難しい言葉が、「区画整理」「固定資産税」

以後、ふつー(以下?)に現在に至る。

平成16年 関ケ原の戦いで西軍の総大将に担ぎ上げられてしまったために、大国毛利を凋落させた男、「毛利輝元」の生涯を描いた小説、[傾国の烙印―国を傾けた男毛利輝元の生涯]を出版。

平成18年 老いた名将信玄に翻弄される武田勝頼を描いた[死せる信玄生ける勝頼を奔らす]を出版。

平成20年 共に絶版となる。

平成22年 性懲りもなく、黒田如水・長政・忠之、三代の葛藤と相克を描いた「黒田家三代―戦国を駆け抜けた男達の野望」を出版。

平成23年 処女作「傾国の烙印」がネット上で法外な値段で売買されている現状を憂慮し、「毛利輝元 傾国の烙印を押された男」として復刻再出版

平成25年 前作、「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす」が大幅に割愛された物だったことから、常々、忸怩たる思いがあり、文庫本化に際し、新たに5倍近くに書き足した「死せる信玄 生ける勝頼を奔らす 増補版」として出版。

平成29年 兄、岩崎彌太郎の盛名の影に隠れ、歴史の行間に埋没してしまった観がある三菱財閥の真の創業者・岩崎弥之助を描いた、「三菱を創った男岩崎弥之助の物語 ~弥之助なかりせば~」を出版。

わかりやすく言うならば、昔、流れていた博多のお菓子のCM、「博多の男は、あけっぴろげで人が良く、少しばかり大仰で祭り好き」を聞き、「人が良い」を除けば、何とピッタリなんだと思った典型的博多人にして、九州データブックという、まじめな本に「福岡県の県民性」として、「面白ければ真実曲げてもいい」と書いてあったことに何の違和感も持たなかった典型的福岡人
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